「開かずの踏切」として知られる京王線・桜上水駅前の「下高井戸5号」。踏切の長さが約25メートルあるにもかかわらず、開いた数秒後に警報機が鳴ることも多い。渡りきれない人や強引な横断をしようとする人もいて危険だ(撮影/写真部・小原雄輝)
「開かずの踏切」として知られる京王線・桜上水駅前の「下高井戸5号」。踏切の長さが約25メートルあるにもかかわらず、開いた数秒後に警報機が鳴ることも多い。渡りきれない人や強引な横断をしようとする人もいて危険だ(撮影/写真部・小原雄輝)

 日本一の乗降客数の新宿駅。乗り入れる電鉄各社にとって、ラッシュ対策は重要課題だ。東京西部を並行して走る小田急線と京王線。ライバル同士はその取り組みの違いも鮮明だ。

 国土交通省によると、ラッシュ時の混雑率は小田急線が191%、京王線は165%。圧迫率が高いのは小田急線だが、「輸送力」では先んじている。

 小田急線は1989年から線路容量を増やす「複々線化」と踏切をなくす「高架化」に着手。騒音などで周辺住民から訴訟を起こされるなど紆余(うよ)曲折あったが、2017年度に完成のメドがついた。区間は東北沢~和泉多摩川間の10.4キロだが、梅ケ丘~和泉多摩川間はすでに複々線化しているので、残すは東北沢~世田谷代田間の1.6キロのみ。複々線化完成にともない、18年3月に抜本的なダイヤ改正を行う予定だ。鉄道ライターの土屋武之さんはこう語る。

「複々線化は町田、相模原方面から新宿に通う人は特に恩恵が大きい。完成すると、朝のピーク時、町田~新宿間は約10分間の短縮になる。今年3月のダイヤ改正では、区間準急を廃止して、快速急行を増発。新宿~相模大野間が毎時上下3本から6本に増えたことで、日中や土日の利便性も向上した。『急行待ち合わせ』もなくなるので、急行系列車、各駅停車、双方の利用者にメリットがあるはずです」

●代々木上原から詰まる

 ただ、各駅停車駅から新宿方面へ20年以上通勤している男性(59)はこんな不満も漏らす。

「代々木上原~新宿間は複々線化されていないので、ラッシュ時には電車が詰まり、ほぼ間違いなくノロノロ運転。東北沢~世田谷代田間が地下化して駅の雰囲気が悪くなった上に、電車詰まりが重なるので気が滅入る」

 小田急電鉄は18年3月の大型ダイヤ改正で、平日ピーク時の最大運転本数を1時間27本から36本へ約3割増やす予定。新宿~代々木上原間はより電車が詰まることも考えられるが、同電鉄CSR・広報部の担当者は、

「増発する9本のうち、2本は新宿駅方面で、7本は千代田線直通の予定です。メトロネットワークを活用して都市中心部へのアクセスをより良くします」

 と、利便性の向上を強調する。

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