●触感は再現できない

 実は、今年は「VRビジネス元年」と言われている。2200万人もの会員を抱え、アダルト動画を含むさまざまなコンテンツ配信を手掛ける「DMM.com」は9月13日から、VR用コンテンツの有料配信事業を開始。オキュラス・リフトなどの専用ヘッドセット向けのみならず、iOS、Android端末向けにも配信が始まる。さらに、10月にはソニーからVRヘッドセット「Play Station VR」が発売予定というから、家庭用ゲーム機感覚で仮想現実の世界を楽しめる日もそう遠くはない。

 少子高齢化が進む中、アダルトVRには批判も少なくなさそうだが、技術はここまで進んでいるのだ。だが、課題もある。一つにはコンテンツ数が限られていること。加えて、「視覚、聴覚では圧倒的な臨場感が味わえても、触感はVRで再現できない」(吉田氏)という点だ。当然といえば当然だが、物足りなさを感じるのも事実。その点、同エキスポ出展者のなかで最年少の明治大学の学生は意欲的な作品を紹介していた。

「感触がない以上、VRでセックスを再現しても限界がある。それなら、サポートするコンテンツに絞ったほうが、VRならではの“没入感”をハンパなく味わえると思ったのです」

 スマホをセットしたゴーグルのなかでは、美少女が微笑みながら、AERA誌面上では書けない言葉で話しかけてくる。“絡み”のないコンテンツのため、より没入できるというわけだ。

 イベント運営上の課題もある。同エキスポは当初予定されていた会場を急遽変更。「性犯罪が起きかねないと周辺住民からお叱りを受けた」(吉田氏)というのだ。そんな誤解を払拭して、VRビジネスを花開かせることはできるのか? 一度、その没入感を味わえば答えは見える……かもしれない。

(ジャーナリスト・田茂井治)

AERA 2016年9月19日号