昭和天皇の大喪の礼。葬列は武蔵陵墓地に向かった (c)朝日新聞社
昭和天皇の大喪の礼。葬列は武蔵陵墓地に向かった (c)朝日新聞社

 逝去を待たずに天皇が退位し、皇太子が新天皇になる──。シンプルなことのようだが、近代日本では直面したことのない事態。退位した天皇の葬儀はどうなるのか? 次に議論が必要な課題は何なのか? 専門家に疑問をぶつけた。

 昭和天皇逝去の際は、国の儀式として「大喪の礼」、皇室の儀式として「大喪儀」が行われた。

 皇室典範第25条は「天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う」と定めるが、退位後の天皇の逝去について規定はなく、国の儀式はおそらく行われない。皇室の葬儀について定めた「皇室喪儀令」も日本国憲法の施行にあたり廃止され、現在、規定や式次第はない状態だ。

 しかし、静岡福祉大学の小田部雄次教授(日本近現代史)によれば、宮内庁は慣行として皇室喪儀令を参照している。

「太上天皇の崩御についても皇太后同様、『大喪儀』が行われるのでは」

 それでも、天皇の逝去に比べ、プロセスはシンプルだ。生前退位が法律で規定されれば、天皇の葬儀自体が行われなくなる可能性もある。現天皇はすでに、火葬や陵の縮小など葬儀簡略化の希望を表明。宮内庁も意向に沿う決定をしており、火葬場の建設費用などは発生するものの、残された家族や国民の負担、経済の停滞は結果として抑えられることになるのかもしれない。

 次に議論が必要なのは何だろうか?

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