皇室費と天皇・皇族の生活費(2016年度予算、アエラ9月12号より)
皇室費と天皇・皇族の生活費(2016年度予算、アエラ9月12号より)

 逝去を待たずに天皇が退位し、皇太子が新天皇になる──。シンプルなことのようだが、近代日本では直面したことのない事態。生前退位し、新天皇に財産などを引き継ぐ際は課税されるのだろうか? 専門家に疑問をぶつけた。

 国から支給される皇室費には、宮中晩餐会や園遊会、御所の維持費など天皇家のために使われる宮廷費と、天皇、皇族の生活費にあたる内廷費、皇族費がある。

 いずれも税金で、内廷費の対象は天皇と内廷皇族、皇族費は宮家などの皇族だ。内容と額面は、皇室経済法と皇室経済法施行法に定められている。

 成城大学の森暢平准教授(ジャーナリズム論)は言う。

「天皇、皇后の生活費には、退位後も変わらず内廷費を充てることになる」

 静岡福祉大学の小田部雄次教授(日本近現代史)も同じ見解。その理由は、

「内廷皇族とは皇后、太皇太后、皇太后、皇太子一家、未婚の皇子女を指します。太上天皇の立場は現在でいう皇太后に近い。内廷皇族にあたると考えられます」

 現在、内廷費としては毎年3億2400万円が計上されている。23年にわたり宮内庁に勤務し、現在はBSジャパン「皇室の窓」の監修などを務める山下晋司氏は内訳をこう説明する。

「内廷費のおよそ3分の1にあたる約1億円を人件費が占めるとされています。新天皇となる皇太子殿下には、いまよりも多くのサポートが必要になりますが、逆に退位後の天皇陛下に必要なサポートは減るでしょうから、全体ではそう変わらないのでは」

 皇族費は、皇族ひとりひとりに定額が支給されるもので、例えば秋篠宮家には毎年6710万円。

「東宮家が抱える人員は、コックや運転手を含めると約70人。これに対して秋篠宮家は20人程度です。秋篠宮が実質的に皇太子に近い公務を行うようになれば、サポートする人員は現在の規模でいいのか、現在の皇族費の額で賄えるのか、気になります」(山下氏)

 もし秋篠宮の地位が皇太弟などに改められ、内廷皇族とされれば、その数は5人から10人へと倍増する。内廷費を増額する必要が出てくるのかもしれない。

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