全国豊かな海づくり大会も、毎年天皇が出席 (c)朝日新聞社
全国豊かな海づくり大会も、毎年天皇が出席 (c)朝日新聞社

 逝去を待たずに天皇が退位し、皇太子が新天皇になる──。シンプルなことのようだが、近代日本では直面したことのない事態。退位後は、公務を一切やめてしまうのだろうか? 専門家に疑問をぶつけた。

 憲法が定める天皇の「仕事」は、「内閣の助言と承認」のもとで行う内閣総理大臣の任命や、国会の召集などの国事行為だが、実際には天皇はほかにも、公的行為などさまざまな公務を行っている。

 静岡福祉大学の小田部雄次教授(日本近現代史)は言う。

「公的行為については、実際には厳密なルールはなく、まず天皇が行うべきことが決まったのち、他のどの皇族がどの公務を行うかを慣例に準じて宮内庁内で調整し、決めることになるでしょう。国民体育大会の開会式や、終戦記念日の全国戦没者追悼式への出席、災害慰問などが、天皇が率先して行うことになるだろう公的行為です」

 退位後の現天皇は一部の公務を続けるのではないか、というのが小田部教授の見方だ。

「天皇、皇后がこれまで熱心に取り組んできた『全国豊かな海づくり大会』『ハンセン病療養所慰問』『慰霊の旅』などは、退位後もご体調の許す限り行われるのではないか。一方、象徴天皇として思いを込めて臨んできたであろう『慰霊の旅』については、自身も続けつつ、次世代に継承してほしい思いがおありではないか」

 東京大学の三谷太一郎名誉教授(日本政治外交史)は、退位後は「きっぱり身を引かれるのでは」と考える。

「陛下は曖昧なことをなさらず、けじめをつける方だという印象があります」

 退位後は一切の公務から退き、象徴天皇がどういった公務を行っていくかを含め、全面的に次世代に委ねられるのでは、と。

「住まい」についても、公務を行うなら東京のほうが便利だと指摘する小田部教授はさらに言う。

「公務をあまり行わないなら、大正天皇が病気になった折に日光や沼津の御用邸を使ったように、季節に応じて那須御用邸や葉山御用邸に住むかもしれない」

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