車いすテニス/上地結衣(かみじ・ゆい、21)/エイベックス/兵庫県明石市出身。生まれつきの二分脊椎症で11歳から車いすに。その頃、車いすテニスと出合い、14歳で全日本選手権優勝。18歳でロンドン・パラ単複8強入り。20歳で世界ランキング1位に (c)朝日新聞社
車いすテニス/上地結衣(かみじ・ゆい、21)/エイベックス/兵庫県明石市出身。生まれつきの二分脊椎症で11歳から車いすに。その頃、車いすテニスと出合い、14歳で全日本選手権優勝。18歳でロンドン・パラ単複8強入り。20歳で世界ランキング1位に (c)朝日新聞社
ウィルチェアーラグビー/池崎大輔(いけざき・だいすけ、38、右)/北海道Big Dippers/北海道函館市出身。6歳で手足の筋力が徐々に落ちる難病シャルコー・マリー・トゥース病と診断。高2で車いすバスケを始め、30歳でウィルチェアーラグビーに転向。ロンドン・パラで4位 (c)朝日新聞社
ウィルチェアーラグビー/池崎大輔(いけざき・だいすけ、38、右)/北海道Big Dippers/北海道函館市出身。6歳で手足の筋力が徐々に落ちる難病シャルコー・マリー・トゥース病と診断。高2で車いすバスケを始め、30歳でウィルチェアーラグビーに転向。ロンドン・パラで4位 (c)朝日新聞社
車いすバスケットボール/香西宏昭(こうざい・ひろあき、27、右の写真の奥)/NO EXCUSE/千葉市出身。パラリンピックは北京大会、ロンドン大会に出場 (c)朝日新聞社
車いすバスケットボール/香西宏昭(こうざい・ひろあき、27、右の写真の奥)/NO EXCUSE/千葉市出身。パラリンピックは北京大会、ロンドン大会に出場 (c)朝日新聞社
車いすバスケットボール/藤本怜央(ふじもと・れお、32、下の写真の中央)/宮城マックス・SUS/静岡県島田市出身。パラリンピックはアテネ大会から3大会連続出場 (c)朝日新聞社
車いすバスケットボール/藤本怜央(ふじもと・れお、32、下の写真の中央)/宮城マックス・SUS/静岡県島田市出身。パラリンピックはアテネ大会から3大会連続出場 (c)朝日新聞社

【AERA 2016年4月4日号より 年齢も掲載当時のまま】

 障がいがあることは、アスリートたちにとって何の「障害」でもなかった。肉体を鍛え、理論を理解し、技を磨く。彼らの「戦い」を取材した。

*  *  *

 テニスと車いすテニス。

 コートもネットもボールも同じで、ルールも車いすテニスにツーバウンドが認められている以外、ほぼ同じだ。最大の違いは、プレーヤーが車いすに乗っているかどうか。車いすテニスには、車いすによって引き出された「スポーツとしての新たな面白さ」がある。

●3手先を読んで勝利

 選手はボールを打ち込んだ次の瞬間、両手で車いすを操作して移動を始める。サイドステップはできない。後ろに下がるには相手に背を向けなければならないこともある。一般のテニスと比べて「取れないエリア」が広いからこそ、相手の動きや返球を予測して将棋のように2手先、3手先を読むことが勝利につながる。

 上地結衣(21)は言う。

「ロンドンの頃まで、自分のプレーだけに集中することが重要だと思っていました。でも、それだと周囲が見えなくなる。冷静に相手を見て、崩して、自分のテニスに持ってくることが大事だとわかってきました」

 勝敗の鍵を握るのも車いす。国枝慎吾(32)や上地の車いすを製造するオーエックスエンジニアリング(千葉市)の安大輔は言う。

「1ミリ単位の調整がプレーに影響します」

 安は15年春、国枝の要望で座面を5センチ上げた。打点は上がるが、低いボールが拾えなくなり、車いすの車輪に手が届く範囲も狭くなってスピードや瞬発力が落ちた。試行錯誤の結果、上げる高さは7ミリに落ち着いたという。

 車いすバスケットボールも、車いすテニス同様、一般のバスケに車いす操作が加わっただけで、別の面白さがある。まず目を奪われるのは、選手たちのシュート力。車いすに座った状態で放ったシュートが一般と同じ高さのゴールリングに次々に吸い込まれる。

 選手たちには障がいに応じて持ち点が与えられ、コートに立つ5人の合計は14点以内でなければならない。エースばかりでなく、障がいの重い選手の働きが勝敗の鍵を握る。敵をブロックしてエースが通る道を確保し、得点をアシストするなど、チームプレーは一般のバスケ以上の見応えだ。

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