「チケキャンはサイトで、転売目的でのチケット購入・販売はお断りとうたっているのに、転売目的の売買であふれている。整合性の点でもおかしい」

●運営側にも問題意識

 チケキャン運営会社「フンザ」の寺谷祐樹取締役は、取材に対し「(業界団体と)対立する気はない。議論を深めていく気はある」と話す。ただ、業界側が問題視する、一般と転売ユーザーの区分けについては、「明らかな大量出品をのぞいては判断は難しい」と答えるにとどまった。

 しかし、転売サイトが生むメリットもある。それは、

「市場の流動性を高め、空席を埋める。活性化にも寄与できている自負はある」(寺谷氏)

 チケキャンでは確かに、定価やそれ以下でチケットを出品するユーザーも多数いて、このことが気軽にライブに行ける機会を作り出しているのも事実だ。

 チケキャン側も、「高額転売はよしとは考えていない」と話し、議論によっては制限を設ける考えを示唆した。

 転売チケットの価格にキャップ(上限)をはめるのは一案だ。出品、購入者から各5%の手数料収入が減る可能性もあるが、「場の健全性はそれ以上に重要視している」(寺谷氏)。

 業界団体でも、定価取引のみのチケットシェアサービスの育成を図るなど、市場の健全化を視野に入れる。

 ライブのチケットは多くの場合、買った後の払い戻しはできず、急用などで行けなくなった人を救済するという側面も、転売市場にはある。

 問題を業界内の論理だけで語るのではなく、音楽文化をどう発展させるのかを第一に、解決策を探るべきだ。(編集部・岡本俊浩)

AERA 2016年9月12日号