●携帯トイレは140枚

 災害時は、敷地内の排水管が破損して汚水があふれ、下水道が復旧するまでトイレが使えなくなる可能性がある。

「首都直下地震が起これば、下水道が利用困難になる人は最大150万人と想定されています」(永田さん)

 トイレの回数を抑えようと水分摂取を我慢して脱水症状。震災時にはよく見られる現象だ。永田さんは、携帯トイレを少なくとも140枚(4人家族の場合)用意しておくことを勧める。また、できるなら震災が起こる前に、自宅のトイレに簡単に装着できるか、尿や便をしっかり吸収できるか、においを抑えられるかをチェックしておく。

「マンションのディベロッパーでも、最近は震災時のトイレ問題を念頭に置いています。私たちが関わったところでは、自衛隊が用いる本格的な災害時用トイレをマンションの各フロアに設置していました」(同)

 避難生活では、食事が炭水化物に偏る。炊き出しのおにぎり、支援物資のビスケットやパン、麺類が中心になるからだ。ビタミンやミネラル、食物繊維が不足し、心身の不調や便秘の原因になる。永田さんは、炭水化物以外は自分で準備しておくことを提案。バラエティー豊かなフリーズドライ食品が出ている。

 日頃から野菜などを冷凍しておき、災害時に自然解凍して食べる方法も。永田さんたちが「自然解凍したらどうなるか」を実験した結果では、「玉ネギは薄切りにして炒め、冷ましてから冷凍」「キャベツ、白菜、キュウリを刻んで塩もみしてから冷凍」「大根をすりおろして水気を切って冷凍」「すりおろした山芋に酸化防止の酢を少し入れて冷凍」が便利だった。

 後悔しないために。(ライター・羽根田真智)

AERA 2016年9月5日号