●口腔ケアは重要

 口腔ケアをはじめ、「そうはいっても、水道やガスなどのライフラインが止まった状態でできるのか」と疑問に思うところを「援助」してくれるのが、防災グッズだ。

地震イツモマニュアル』(ポプラ社)を先日出版したNPO法人プラス・アーツ理事長の永田宏和さんは、「もしも、ではなく、いつも地震とつきあっていくべき」と話す。

 防災グッズの商品開発の進歩はめざましい。余震が続いていたり、自宅が倒壊していたりすれば、避難所にとどまったほうがよい。しかし、自宅に帰れる状況だが「不安だから」との理由で避難所にいるなら、むしろ自宅で避難生活を送ったほうがストレスを軽減できるかもしれない。

 永田さんらは、阪神・淡路大震災の被災者167人から様々な話を聞いた。そこから導き出した「いつもの暮らしで備えたほうがいいグッズ」に対し、複数の製品を比較するなど繰り返し検証。備えていても、災害時に使えなければ意味がない。数日しかもたないものでも意味がない。高価すぎるものは、防災グッズとして事前に買い揃えるのに向いていない。「重要なのは質と量」との結論に至った。

 たとえば、前述した口腔ケア。永田さんも、口腔ケアの重要性に同意する。しかし歯磨きセットはあっても、水道が止まっていれば、一日数回磨くのを躊躇する。避難所では、特に高齢者であれば、水道がある場所まで出向くのが難しいというケースもあるだろう。洗口液で口をすすぐのは「やらないよりやったほうがいいものの、口腔内の菌を十分に落とせるかというと、『磨く』よりは劣るでしょう」(前出の大谷医師)。

 そんな場合に重宝するのが、介護の現場で使われている口腔内を掃除するシートだ。

「もともと口腔ケア用に作られているものなので、アルコールフリーです。口に含んでも問題ありません」(永田さん)

 シートなら歯の表面や裏側、歯と歯の間などをゴシゴシ拭け、十分に歯ブラシの代用になる。シートならではの利点もある。

「お箸やスプーンも拭ける点です」(同)

 皿や器にはラップをつけて使えば、流水で洗わなくても、使いまわせる。しかし、箸やスプーンにラップをまいて使うのは不便。そういう時に、シートが活躍する。100枚入りの大箱もあり、4人家族であれば5、6箱用意しておくといい。

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