世界一忙しい日本の教師を応援したい──。大学や専門の垣根を越え、研究者らが昨年9月に設立した一般社団法人ティーチャーズ・イニシアティブ。会長を務める一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎教授は言う。
「(知識伝達型の今の教育のままでは)これからのグローバル社会で、日本人は永久に『部下』にしかなれない」

 21世紀型教育へシフトするため、要となる教師に向けた学びのプログラムを展開する。

 もっとも、現場からは「教育改革で次々降ってくる『◯◯教育』が教師を疲弊させている」との声も多く聞かれる。理事たちはどう思うか、7月の記者発表で聞いた。

「新メニューが次々登場するのは、『今年の目玉は何ですか?』とマスコミが大臣に聞くから。『既存施策の拡充』では記事にならないから衣替えさせている。いちいち真に受けず、取捨選択すればいい」

 そう答えたのは、東京大学と慶應義塾大学の教授で、元文部科学副大臣の鈴木寛さん。ほかの理事たちも教師の主体性に期待を寄せた。

「『やらされ感』が多忙感にもつながる。自分で打って出て、やりがいを感じられるようになれば変わる。そうしたサポートをしていきたい」(法政大学キャリアデザイン学部の児美川孝一郎教授)

「人を育てる教育は本来やりがいのある幸福な仕事。先生たちと一緒にポジティブに変えていきたい」(慶應義塾大学大学院の前野隆司教授)

 アクティブラーニングを教えるのではなく、アクティブラーナーを育てたい──。多忙感克服の“もうひとつの鍵”がそこにありそうだ。(編集部・石田かおる)

AERA 2016年8月22日号