15年3月生まれの長男(1)を16年4月に保育園に預けられなかった女性(32)は、区内の認証10園に申し込み、空きを待っている。勤務先の小売業の会社は最長で3歳の誕生日前日まで育休を取れるが、長く休んで預けられる保証はない。復職は保育園次第だ。

 東京都中央区で15年6月から保活座談会を開いている高橋真規子さん(38)は、こう話す。

「自らの意思で子どもといる時間や復職の時期を選べない人が増えている。自分のキャリアプランを考えても無駄なのではないか、という諦めのような意識もあるようです」

●「1億総活躍」じゃない

 今年2月、ブログで「保育園落ちた日本死ね!!!」と発信し、保活問題を一気に広めた都内在住の30代の会社員女性は、メールで取材に応じた。

「一番つらかったことは、働かなくてはいけないのに保育園に落ちてしまったことです。共働きなので片方の収入がなくなると家計が非常に厳しくなります。現実は全然そのようになっていないのに、政府が『女性が輝く社会』とか『1億総活躍社会』とか聞こえのいい言葉を言っていることが納得できなかった」

 アエラが最初に、都市部では「保活」をしなければ保育園に子どもを預けづらい状態であることを伝えたのは10年3月。09年4月の全国の待機児童数は2万5384人、15年4月では2万3167人で、状況は改善していない。
「保活」は個人にできる最大限の努力だが、「女性活躍」や「1億総活躍」が叫ばれるようになったここ数年、企業も社員の「保活」を後押しし始めた。女性の労働力が減ることを損失ととらえるようになったためだ。

 仕事と育児の両立を支援する「マザーネット」の上田理恵子社長は、こう話す。

「保育園に預けられるかどうかは、個人の問題だけでなく、企業の問題でもある。保育園に預けられない従業員が増え、一つの部署に集中すると、チームとしてのマネジメントが難しくなる。企業としては、大事な戦力に早く戻ってきてもらわないと困るのです」

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