「保活のために育休を切り上げなければならない」「子どもが生まれる前から保育園に入れるのか心配して情報収集しなければならない」。保活に苦慮する声が実態調査に寄せられた(撮影/写真部・岸本絢)
「保活のために育休を切り上げなければならない」「子どもが生まれる前から保育園に入れるのか心配して情報収集しなければならない」。保活に苦慮する声が実態調査に寄せられた(撮影/写真部・岸本絢)
保活の実態に関する調査
保活の実態に関する調査
東京都の待機児童の状況
東京都の待機児童の状況

 早生まれの保活は絶望的だから、帝王切開での出産時期を早めた──。なぜ、ここまでしなければ保育園に預けられないのか。子育てしながら働くという当たり前のことができないで、「1億総活躍」なんて言えるはずがない。

 育児休業の期限「子どもが1歳半になるまで」が3日後に迫った日、会社に退職願を出した。理由は、長女(1)を保育園に預けられないから。東京都内の保険会社で働いていた女性(31)は、ギリギリまで「保活」を続けたが、復職できなかった。

「働く意欲があるのに、やめざるを得なかった。保育園は見つからず仕事も失ってしまい、これから社会復帰できるのか。ずっとモヤモヤしています」

 長女は2014年11月生まれ。15年4月入園の0歳児クラスでの申し込みは「まだ早い」と感じ、16年4月の1歳児クラスでの入園を希望した。認可保育園には決まらず、順番待ちをしていた東京都認証保育所もどこからも連絡が来なかった。4月を過ぎて、認証に空きが出るのでは、と待ち続けたが、隣の区の認証でも100人待ち。絶望的な状況のまま、育休のタイムリミットがきてしまった。

●子ども主体だと不利に

「0歳児から預けておけばよかったのに」

 よくこう言われる。実際、女性が住む区では15年度、0歳児のほうが1歳児よりも入園が決まりやすく、待機児童数も少なかった。それでも、離乳食もまだ始まらない時期に預けるのは気が引けた。認可外もいくつも見学したが、外遊びをさせていなかったり、オムツ替えのやり方が不衛生だったりして預ける気にはなれなかった。ベビーシッターや一時保育など預け先を転々と変えるのは現実的でなく、娘に負担をかけてしまう。保育園で子どもが亡くなったというニュースを耳にして、ますます心配になった。

「どこでもいいから預けたい、何が何でも預けたい、とまでは思えませんでした」

 子ども主体で考えるほど、「保活」では不利になるという現実がある。

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