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 夏の夜の定番といえば、怪談。怪談イベントも増えているが、美術館も負けてはいない。日本の「怖い絵」が8月の美術館に結集した。

 7月のオープン以来、連日大盛況の江戸東京博物館「大妖怪展 土偶から妖怪ウォッチまで」(8月28日まで)。夏休みということもあり、会場には子どもの姿も多い。「妖怪展の決定版」とうたっている本展には、国宝、重要文化財クラスの絵巻や美術品がそろいぶみなので、日本美術入門としてもいいだろう。

 妖怪たちが列をなして歩く様子を描いた、百鬼夜行絵巻は、室町時代から明治大正の頃まで、数多く描かれてきたが、今回、出展されている伝土佐光信は、その代表といわれる名作だ。他にも縄文時代後期の土偶から江戸時代の化け物、そして妖怪ウォッチまで、会場には日本人が4千年にわたって、愛し続けた妖怪たちが大集合。いかに日本人が「あやかし」の存在に愛着をもってきたかがわかる構成になっている。

●江戸人が愛した浮世絵

 その名もずばり「怖い浮世絵」展(8月28日まで)を開催しているのは、原宿駅からほど近い、太田記念美術館。キャッチコピーは「美術館でキモだめし。」だ。

 確かに展示されている浮世絵は本気で怖い。I部のテーマは「幽霊」で、歌川国貞描く「累の亡魂」から西郷隆盛まで、現世に恨みや思いを残した幽霊の無念さが描かれる。

 II部のテーマは「化け物」で、鬼や土蜘蛛、九尾の狐や化けなど、並外れた想像力で描かれたあやかしが集められている。ときにユーモラスな表情が見られる、可愛いものも。

 そしてIII部の「血みどろ絵」が凄まじい。幕末から明治にかけて大流行した、画面に大量の血が描かれる、残虐かつ様式化された一群の浮世絵だ。

 最近は日本のホラー映画が海外でも高く評価されているが、残虐性を様式美として描くことのルーツを見つけた気がした。

●「地獄ブーム」も到来?

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