神保町中華街で味わう 周恩来が愛した本場中華料理

塩見圭AERA#グルメ

中国名菜 漢陽楼/周恩来が愛した肉団子の味/本... (16:00)AERA

中国名菜 漢陽楼/周恩来が愛した肉団子の味/本... (16:00)AERA
 夏になると食べたくなるアジア料理。パンチのきいたエスニック料理店で「行きつけの外国」を探してみよう。アエラ8月22日号(8月16日発売)で特集した「東京で食べるアジア飯の極」から、今回は特別に中華料理店「漢陽楼」を紹介する。

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「チャイナタウン」と聞いて、神田神保町を思いつく人は少ないかもしれない。古書店街で知られるこの界隈は日清戦争後、多いときで約1万人の中国人留学生が学ぶ場所でもあった。1911年創業の「漢陽楼」は、そんな留学生たちに故郷の味を食べさせたいと生まれた中華料理店のひとつだ。

「昔はまかない付きの下宿もしていたんです」

 と話すのは総料理長の和田康一さん。父は料理長で母も店で働いていた。住まいに行くと、中国語が飛び交い、いつも知らない人がいたという。

「当時のオーナーは面倒見がよかった。お金がなくてもご飯を食べさせて、何泊もさせていたんですね。仲間を助け合う精神がある文化なんだなと思いましたね」

 頻繁にこの店に通っていたのが、のちに中国の首相となる周恩来(1898~1976)だ。当時、神保町にあった東亜高等予備学校の留学生だった。

「うちは浙江省の寧波の料理を提供していますが周恩来さんはその近くの江蘇省の出身なんです。まろやかで素材を生かした味が口に合っていたのでしょう」

 と和田さんは推測する。

「ちなみに、政治家になってからよく対比されるのは毛沢東さん。彼は激辛こってり系の湖南省の出身。その食文化が政治スタイルにも反映されている、なんて言われていましたね」

 周恩来が月に1度、自分へのごほうびとして食べていたメニューが今も残る。「獅子頭(シーズートウ)」という家庭料理だ。

 こぶし大の肉団子を鶏だしのスープで蒸し、やわらかな火力でうまみを出したスープ仕立ての一品。ナイフとフォークで切って口に入れると、滋味深い味わいが広がった。クワイのシャキシャキした食感もあり食べやすい。周恩来はこの一品だけを頼んでいたそうだ。

 数年前、「おじさんの足跡をたどってきた」と周恩来の姪と甥が食べに来てくれたという。

 中国の古い民家をイメージした店内は、神保町の老舗喫茶店の中華版のような雰囲気で居心地がいい。今は老若男女関係なく訪れ、静かに時が流れている。(ライター・塩見圭)

AERA 2016年8月22日号

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