35歳で結婚、一人目を36歳、二人目を40歳で出産した専業主婦の女性(53)は、二人目を授かり訪れた都内の大学病院で、事務的な口調で「産みますか?」と看護師に聞かれた。

「びっくりしましたが、高齢での出産のリスクを考えるきっかけになりました」

 高齢出産では、実際に先天異常や妊娠高血圧症候群、帝王切開などが多くなる。どれも学校で教えられなかった情報だ。

●まずは理想の家族像を

「子どもは絶対に二人は欲しいって話す、40歳目前で結婚した後輩女性がいます。『年齢も年齢だし、不妊治療の専門の病院にも行ってみたら』って言うのが精一杯でした」

 そう話すのは自営業の女性(45)。女性自身、33歳で長男を出産して、35歳から5年間の不妊治療をしたが授からなかった。女性は言う。

「後輩は一人目すら危うい年齢。高齢になると卵子も精子も質が落ちて妊娠しにくいって、案外知られていない」

 日本産科婦人科学会のデータによると、男女とも、加齢により妊娠力は低下。特に女性は35歳以降ぐんと下がる。たとえ妊娠できても流産する確率は40歳で35.1%、45歳以上なら66%というデータもある。

 この自営業の女性は、二人目の不妊治療は、子どもがいない夫婦の治療とは違う大変さがあったという。第一子である子どもの面倒をみる人がいないとき、不妊治療のクリニックに連れていかざるを得ないからだ。冷たい視線は、欲しくても授からない気持ちが分かるだけにつらい。女性はこう打ち明ける。

「友人は慰めのつもりで、『一人いるんだからいいじゃない』って明るく笑うんですが、それが一番つらかった。二人目が欲しいという夫婦の気持ちに寄り添って、見守ってもらえたら」

 キャリア、教育費、加齢……さまざまな壁が「二人目」の前に立ちはだかる。まずは理想の家族像を描いて、周囲に振り回されず向き合うこと。理想をかなえるにはそれしかない。(ライター・三宮千賀子)

AERA 2016年8月22日号