1990年11月12日、2年近くに及ぶ即位の儀式の最終盤、「即位礼正殿の儀」でお言葉を述べる天皇陛下。8日のお言葉で、喪儀と即位に関する行事が同時に進行するのを避けたい、と述べた (c)朝日新聞社
1990年11月12日、2年近くに及ぶ即位の儀式の最終盤、「即位礼正殿の儀」でお言葉を述べる天皇陛下。8日のお言葉で、喪儀と即位に関する行事が同時に進行するのを避けたい、と述べた (c)朝日新聞社

 8日公表された天皇の言葉には、「生前退位」の意向が強くにじんでいた。昭和天皇が終戦に際して行った「玉音放送」にもなぞらえられる今回の意向表明。本当に実現するのだろうか。

【天皇陛下のお言葉全文】

 秋篠宮さまはかつて、「天皇には公務定年制が必要だ」という趣旨の発言をしたことがある。2011年11月22日、46歳の誕生日を前にした記者会見だ。

天皇陛下の公務に定年制を設けたらどうかという意見もある。ある程度の年齢になれば公務を減らして国事行為に専念する制度を考えるべきではないかという意見もあるが、お考えは」

 という質問に、こう答えた。

「私は、今おっしゃった定年制というのは、やはり必要になってくると思います。ある一定の年齢を過ぎれば、人間はだんだんいろんなことをすることが難しくなっていきますので、それは一つの考えだと思いますけれども、じゃ、どの年齢でそういうふうにするか。やはりある年齢以降になると、人によって老いていくスピードは変わるわけですね。だから、それをある年齢で区切るのか、どうするのか、そういうところも含めて議論しないといけないのではないかと思います」

 宮内庁は8月8日、「象徴としてのお務め」についての天皇陛下のビデオメッセージを公表。「退位」の思いが強くにじむ内容を受けて風岡典之長官が記者会見し、陛下が秋篠宮さまの「定年制発言」があった11年ごろから、幹部や側近に「象徴としての務めを果たすことが困難となった場合に、どのように考えればよいのか」と折に触れて伝えていたと明かした。この年の3月に東日本大震災が発生。7週連続の被災地お見舞いなど、いつも以上に多忙だった。ご家族の間では「生前退位」が話題に上っていたのだろう。

●拝謁だけで年100回

 そもそも天皇の公務とは、どういうものなのか。大きく三つに分けることができる=左の一覧。国会の召集や衆議院の解散などの国事行為、式典や行事に出席する公的行為、宮中祭祀などの私的行為がそれだ。内閣から届く書類への署名、押印だけで、年間約1千件に上る。

 23年にわたり宮内庁に勤務し、現在はBSジャパン「皇室の窓」の監修などを務める山下晋司さん(59)はこう話す。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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