昼寝の時間や給食の内容、遊んだ様子などを細かく書いてもらうほど、保護者は保育園での子どもの様子がわかってうれしいものだが、保育士が子どもをみる時間を削って書いていると考えたほうがいい。

 このような中、保育士の働く環境を少しでも改善しようと取り組んでいる園もある。

 首都圏を中心に12園を展開する「茶々保育園グループ」では保育士の社会的地位向上に取り組んでいる。今年4月からはパートも含めたすべての職員に名刺を持たせている。迫田健太郎理事長は言う。

「保育士はこんなにもプロフェッショナルな仕事をしているのに、名刺もなかった。子どもたちに一番近い社会人として、誇りと自覚を持ってもらいたいと思っています」

 茶々おおいずみ保育園(東京都練馬区)で主任保育士の尾又あゆみさん(32)は、名刺を持った効果をこう話す。

「社会人として認められた気がして、保育の質もますます上げていかないと、と思うようになりました」

●ソーシャルな目線必要

 同グループでは産休、育休、時短制度のほか、個人の事情に応じた時間固定勤務もでき、子育てしながらでも働き続ける職員が多い。5歳と3歳の子どもがいる尾又さんも、時短勤務を経験し、現在は固定勤務。時短勤務を経験したことで、それまで夕方以降にやっていた書類書きを日中手が空いたときにやるなど、効率良く働くようになったという。

 神奈川県茅ケ崎市のなぎさ第二保育園では、「保育園が単なる預かり所という認識のままでは保育士の処遇は上がらない」と、保育の現場をもっと知ってもらうために園の様子を日々写真に撮り、保護者に提供している。インターネット写真販売サービス「スナップスナップ」も利用し、保育士の仕事増にならないよう工夫する。柿澤秀旗園長(40)は言う。

「保育園の雰囲気は保育士で決まるんです。保育の力をもっと世の中に知ってもらいたい」

 前出の迫田理事長も、保育士と園児たちが遊ぶ様子を見つめながらこう言った。

「保育士たちは子どもたちの生きる力を引き出し、未来をつくっている。素晴らしい仕事なのに、これまで私たち業界もそれを世の中に認めてもらう努力が足りなかった。これからの保育園にはソーシャルな目線が必要で、もっと地域や社会に開いていかなければと思っています」

(編集部・深澤友紀)

AERA 2016年8月15日号