保育の専門家として、これまでは認可保育園の運営には常に、保育士2人以上の配置が義務付けられていたが、国は保育士不足解消のため、今年4月から子どもの少ない朝夕に限り、保育士1人に加え、研修を受けた保育ママなど資格を持たない人による保育を認めるようにした。この規制緩和に対し、現場では「朝夕は異年齢の子どもを一緒に保育するのでトラブルが起こりがち。逆に専門性を備えた保育士の確保が必要」「無資格者ができる仕事だと思ってほしくない」という反対意見も多い。

●毎日仕事を持ち帰り

 福祉保育労保育部会事務局長で元保育士の佐々木和子さんは言う。

「自身の保育経験をもとに保育をする年上の無資格者に対して、若い保育士が指示や注意をしづらく、ストレスが増えたり、一人で業務を抱え込んだりして負担が増えています」

 保育士の過重労働の原因はほかにもある。まずは膨大な書類書きだ。都内の子育てサポートセンターで働く男性保育士(28)は、認可保育園で働いていた当時、国の「保育所保育指針」で定められた月案や週案などの指導計画や、日報にヒヤリハットの報告書、そして保護者への連絡帳などの書きものが負担だったという。行事の製作物も加わると、勤務時間ではとても終わらず、毎日のように仕事を家に持ち帰っていた。

 食物アレルギーへの対応を必要とする園児や、集団に適応しにくい園児も増えていて、保育士たちのより細やかな対応も必要になってきた。

 さらに、保護者対応も負担増の大きな要因だ。不当な要求をするいわゆるモンスターペアレントもいる。保育園のトラブルに対応するサービス会社「アイギス」の脇貴志社長は言う。

「自分の子を特別扱いしてほしいという親が増え、保育士の負担を増やしている」

 例えば、「うちの子にはこれを必ず使って」と、特別な日焼け止めクリームや虫よけ薬を預ける親や、「給食の調味料に食品添加物が含まれているかもしれないから」と持参した調味料を使うように求める親もいる。

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