書類作成やイベントの準備、保護者への対応……。忙しすぎて、子どもとじっくり向き合う時間がないと悩む保育士も多い(写真はイメージです)
書類作成やイベントの準備、保護者への対応……。忙しすぎて、子どもとじっくり向き合う時間がないと悩む保育士も多い(写真はイメージです)
厚生労働省職業安定局「保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査」(2013)から
厚生労働省職業安定局「保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査」(2013)から
ある認可保育園の一日
ある認可保育園の一日

 保育士のなり手が足りない。背景には低賃金と過重労働がある。長時間保育の子どもや低月齢の乳児が増え、保育士一人一人の仕事量も責任も増える一方。

 保育現場でいま何が起きているのか。

 都心から電車で1時間弱のベッドタウンに立つある保育園の朝は早い。開園は午前7時だが、6時45分の早番保育士の出勤を待ち構えたように、保護者に連れられた園児たちが登園する。

 保護者は替えのオムツや着替え、食事用エプロンなどを定位置にしまい、保育士に子どもを預けると、駅に駆けていった。こうして午前8時前には在園する園児の3分の1の30人ほどが登園する。閉園時間の午後8時まで最長で13時間、保育園で過ごす子どもも少なくない。

 保育士になって10年目の女性は言う。

「待機児童問題が深刻になってから低月齢の乳児の受け入れが増え、体力的、精神的に重労働になりました。長時間保育の子どもたちも年々増えていて、保育士のローテーションもぎりぎりの状態。体調が悪くても休みたいと言うのも気が引けます」

●トイレに行けず膀胱炎

 その女性は4歳児クラス18人の担任を1人で担当している。早番勤務のときは朝から息つく間もなく、補助の保育士が付いている時間帯にトイレに行こうと思うが、子どもに話しかけられたり、トイレに行きたいと言い出す子がいたりして、我慢することも多い。トイレに行かずに済むよう水分を取らずにいたら、昨年秋に膀胱炎になった。周囲にも膀胱炎に悩む保育士は多い。

「保育現場は余裕が全くありません。人の子育てを支援しながら、長時間労働なので自分の子育てがおろそかになってしまい、辞めていく人も多い。こんな職場で、子どもたちとちゃんと向き合えるのか、安全を守れるのかと、毎日自問自答しています」

 今年2月、「保育園落ちた日本死ね!!!」の匿名ブログで注目を集めた待機児童問題。背景にある「保育士不足」にもスポットが当たった。というのも、認可保育園では保育士の人数が「児童福祉施設最低基準」によって「0歳児3人につき保育士1人以上」などと定められていて、保育士が足りないと園児を受け入れることができず、保育士不足による待機児童も各地で発生している。保育士の有効求人倍率をみると、毎年1月ごろがピークで2015年1月には2.18倍。東京は5倍を超えている。それだけ求人に対し、なり手が少ないことがわかる。

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