●一人っ子政策も逆風に

 中国の同性愛者たちは根強い偏見やプレッシャーにさらされてきた。1997年に刑法が改正されるまでは、取り締まりの対象だった。一人っ子政策が長く続き、孫の誕生を楽しみにする多くの親にとって、子どもの同性愛は今も衝撃的で受け入れがたい。共産党政権のもと、同性愛の存在を公に認めるような機運は生まれていない。

 遼寧省大連市に住む宋歌さん(42)が自身の同性愛に気づいたのは、出産と離婚を2度ずつ経た後。08年にパートナーの姜小妹さん(40)に出会うまで、同性愛に思い至らなかった。

 1人目の夫からは家庭内暴力(DV)に遭った。2人目の夫は、行動に事細かに干渉した。うまくいかなかったのは、いい男性とめぐり合えなかったからか。そんなふうに考えていた。

「同性愛が何かを知らず、自分自身のことに気づけなかった。私たちが子どものころは何の情報もなかったから。同性愛についておおっぴらに語れる今の若い世代がうらやましい」

 息子(22)と娘(15)は宋さんのことを理解し、姜さんとも仲がいい。2人は思うのだ。中国の同性愛者はどんどん生きやすくなっている、と。

 同性愛の研究で著名な学者、李銀河さん(64)は、中国の人口の4%が同性愛者だと推計する。昨年の人口で計算すると、約5500万人になる。

 同性婚をめぐっては、米連邦最高裁が昨年、すべての州で認める判決を言い渡した。日本では同性婚は認められていないが、東京都渋谷区などで同性カップルを公的に「パートナー」と証明する制度が始まっている。

 冒頭の結婚式を挙げた孫さんは願う。

「同性愛という呼び方が最終的にはなくなればいい」

(朝日新聞上海支局長・金順姫)

AERA 2016年8月8日号