日本のバレエダンサーは、なぜこんなに世界で活躍できるようになったのか?(※イメージ)
日本のバレエダンサーは、なぜこんなに世界で活躍できるようになったのか?(※イメージ)

 イギリス、フランス、そしてロシア。伝統と格式を誇る世界最高峰のバレエ団で、日本のダンサーの活躍が目立つ。

 彼らがいま評価を得るのは、なぜなのか。

「その日」は突然やってきた。

 今年6月、英国ロイヤル・バレエ団ダンサーの高田茜(26)と平野亮一(32)は、芸術監督との一対一の面談に臨んだ。一年を振り返る、年に一度の大切な日。高田は、主役を務めた「ジゼル」を高く評価されたが、別の作品では、改善の余地があると言わんばかりの芸術監督の言葉に、じっと耳を傾けていた。

「来シーズン、頑張ります」

 と答えて、気持ちを新たにした瞬間、芸術監督がさらっと、こう口にした。

「次のシーズンから、プリンシパル(最高位)にするよ」

 高田は言う。

「まったく予想していなかったこと。毎回の舞台に成長が見える、と言ってもらえた。それが良かったのかな」

 6月10日、高田と平野が2人同時にロイヤル・バレエ団のプリンシパルになることが正式に発表された。同バレエ団で、日本人ダンサーがプリンシパルに昇格するのは、1993年の川哲也、95年に同バレエ団にプリンシパルとして移籍した吉田都以来、約20年ぶりのことだ。

●技術よりも「魅せ方」

 ロイヤル・バレエ団の広報担当によると、今秋から始まる新シーズンの正式団員は97人。うちプリンシパルはわずか17人だ。高田、平野ともに、若手ダンサーの登竜門「ローザンヌ国際バレエコンクール」で頭角を現し、研修先としてロイヤル・バレエ団を選んだことがすべての始まり。だが、「世界」はそれ以前から視野に入っていた。

「小学校高学年の頃から、バレエをやるなら海外で、という意識はありました。日本の文化ではないので、せっかくやるなら本場に行きたい、と」(平野)

 日本で、ある程度の技術は身についた。だが、ロイヤルに入団すると、「表現力」の差をいや応なく突きつけられた。

 求められたのは、どれだけ高くジャンプできるか、回転できるか、ではない。それよりも、芸術的に「どう魅せるか」。入団当初は、踊る機会も与えられず、「何をしに来たんだろう」と悩んだこともある。「踊りたいなら、踊らせてもらえるところに行け」と周囲に言われたことも、一度や二度ではない。

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