調停にもとづいて補修工事が進められてきたが、今年5月、マンション地下の梁に、コンクリートが固まった後に穴が開けられ、下水道管などが通っていることに、住民が気づいた。

 管理組合が確かめると、コンクリートで固める前に開けた穴の位置が低く、下水道管の流れが悪いことなどから、新たな穴を開けたという。問題は、その時に鉄筋も切ったことだ。特に、主筋が22本切られていることが住民の怒りに油を注いだ。

「主筋を切れば耐震強度が下がる。穴を開けた時に主筋を切ったことに気づかないはずがない。少なくとも現場は知っていながら入居させたことになる。これは調停の範囲外だ」(ある住民)

●手抜き工事起きやすく

 住友不動産側は、改めて鉄筋を溶接でつなぐなどの補修で強度を確保すると主張し、建振協もこれを認めたという。建振協は「依頼主以外には説明しない契約になっている」と取材を拒み、住友不動産側は新たに見つかった施工不良も調停の範囲内として、補修を進める姿勢だ。

 マンションの施工不良に詳しい、さくら事務所のコンサルタント、土屋輝之さんはこう話す。

「マンションの施工不良は表に出にくいが、珍しくはない。ディベロッパーの過当競争で工期が短くなり、熟練の現場作業員も少なくなって、手抜き工事が起きやすくなった」

 住友不動産は「調停にもとづいて専門家と公的機関からのお墨付きを得て補修を進めている。風評被害による所有者の損害につながるため取材は受けられない」などと説明している。(朝日新聞経済部・松浦新)

AERA 2016年8月8日号