「協力する」と答えた夫と不妊治療の末、40歳で長女出産。45歳の時、「高齢出産の自分は長女の恋バナひとつ付き合えない」「長女は人よりも早くに両親を失うだろう。きょうだいがいれば助け合って生きていってくれるのでは」と考え、2度目の不妊治療を決断。幸いなことに、すぐに次女を授かった。

 ゴールが見えず、精神的、肉体的、時間的、金銭的に負担を強いられる不妊治療。妊娠中は、胎児の重みで恥骨を骨折。数年前には乳がん発症。病院の同室の乳がん患者も不妊治療経験者で、「関連は不明だが、もしかしたら」と感じた。

 妊娠、出産は女性の体を痛めつけ、子育ては苦行がほぼエンドレスで続くようなもの。だからこそ「私だって大丈夫だったんだから、あなただって」と言う気にならない。

「『子ども持ちなさいよ』と軽々しく言える人は、他人の痛みや苦しみ、異なる価値観が世の中にあることを想像する力が欠如していると思います」

●子ども増は無駄な抵抗

「日本は少子高齢化を受け入れてつつましく衰退していくしかないのでは」

 こう話す女性(57)は、同い年の夫との間に2人の娘がいる。子どもを持つ・持たないについて、結婚前から考えたことがない。できたら産む。できなければ仕方ない。不妊治療は不自然という気持ちがある。

 結果的に子どもはできたが、仕事との両立で、子どもにあまり寄り添えなかった。それだけ頑張った仕事も、出産のたびに会社を変わり、リストラに遭い、転職7回目の小さな会社で定年を迎えようとしている。

 自分の経験からも、日本の、特に都市部は大勢の子どもを産んで育てる余裕がない。子育て支援などで子どもを増やそうとするのは、無駄な抵抗ではないか。

「子どもは減る。それを前提に、せっかく生まれた子どもをよく育てる方向に社会が成熟したらいいと思うのですが」

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