「我々には日常である“夏”を素敵に見せられる視点は何かと考えたときに、未来人の目線はどうだろうと思いつきました。キラキラした夏を知らない人から見たら、素敵さがより強調できるのではないか。だから、最初からメインの登場人物の一人が未来人だと明かし、彼が何を感じるか、そこで何が起きるかも同時に描くオリジナルな展開になっています」

 自身が映像にめざめた原体験ともいえる大切な作品だから、その魅力もポイントもわかる。たまたま原作執筆から50年という節目に合致したため、とんとん拍子にドラマ化が決まった。

「原作のあるドラマが簡単で安易、という風潮は違うと思います。映像化して更にイマジネーションが膨らむ作品もあれば、映像には向いていない作品もある。そこを見極めるのが映像に携わる人間の力量だと思います」(松本)

 作品の魅力を新しい切り口で見せる試みは、著名な原作だからこそできるアプローチ。16年版のラストシーンも感動の新機軸とのことなので、楽しみにする価値は十分にある。

 ネットとの連動や副音声での解説など、ほかにも新たな展開は模索されている。猛暑に夏らしいドラマを楽しむのも一興だ。(文中敬称略)

(ライター・早川あゆみ)

AERA 2016年8月8日号