●日本人の手で「3.11」を

 71年に公開された「ゴジラ対ヘドラ」で登場した怪獣ヘドラは、ヘドロから生まれ有害物質をばらまき、人間を溶かす。高度経済成長の代価として、自然をないがしろにする社会への警告が込められていた。

 74年の「ゴジラ対メカゴジラ」は沖縄が舞台となったが、沖縄はその2年前にアメリカから返還されたばかりだった。

 14年のハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」は、謎の怪獣による原発事故、続く津波とともにゴジラが登場する。それは「3.11」の東日本大震災で起きた原発事故を想起させた。

 そして、間もなく公開される「シン・ゴジラ」。東日本大震災から5年が過ぎ、今度は日本人の手で「3.11」を描いてほしいと吉川さんは期待する。

「そこから目を背けたら、ただのキャラクターもの。やらなければ、ゴジラじゃないです」

 吉川さんがゴジラを好きになったのは父親の影響だった。4歳の時、家族で映画館に「ゴジラVSモスラ」を観に行きゴジラ愛に目覚めた。今、吉川さんには1歳になる息子がいるが、自分が幼いときに映画館で味わった感動や心躍った気持ちを息子たち次の世代につなげていきたいと熱く語る。夢は?

「早く息子と、映画館で一緒にゴジラを観たいです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2016年8月1日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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