●県道を数キロ封鎖

 辺野古問題とは異なり、この件で翁長雄志知事の姿勢はあいまいで、「オスプレイ配備を前提としたヘリパッド建設には反対」という表現にとどまっている。

 それでも参院選の翌早朝、政府が不意打ちで資材搬入を始めたことにはショックを受け、緊急会見で「こんなやり方は到底容認できない」と怒りをあらわにした。県議会も21日、建設中止を求める決議を採択した。

 機動隊来県に危機感が強まる中、高江地区山中のゲート封鎖には、県内各地から支援者が集まるようになり、21日には、1600人(主催者発表)もの反対集会も開かれた。そして翌未明、機動隊は現場の県道を数キロにわたって封鎖して、バリケード用の車両や人々を半日がかりで排除した。

 反対グループ「ヘリパッドいらない住民の会」メンバーの伊佐真次・東村議は「最初の2カ所が造られた時には、機動隊など来ず、防衛局だけだった。こんな威圧的なやり方をする必要はまったくない。政府は見せしめのつもりだろうが、我々は萎縮しない」と憤慨する。

 現地ではすでにオスプレイの運用が始まっていて、6月には午後10時以降の離着陸訓練が集中して行われる、これまでにない状況も生まれた。

 ヘリパッドから約400メートルの至近距離に住み、「騒音で子どもたちが眠れなくなってしまった」という安次嶺雪音(あしみねゆきね)さん(45)は、中1から5歳までの子ども5人を連れ、隣村での避難生活を強いられている。

「2カ所ですらこの状態。6カ所も造られたら、高江にはもう暮らせない。政府のやり方はあまりにもひどい」

 翁長知事は沖縄基地問題の根源を語る時、米軍統治時代に行われた土地接収を指す「銃剣とブルドーザー」という歴史的形容をしばしば口にする。

 まさにこの言葉を想起させる今回の政府の攻勢は、本土復帰以後、最大の傷痕を県民感情に刻み付けているように映る。(ノンフィクションライター・三山喬)

AERA 2016年8月1日号