監督自身、人生の時期によって方向性や強弱を変えながら、怒りの感情を抱き続けたという。ただ、養子になる9歳より前の記憶はなく、生みの親を探そうとしたこともないという。

「子どもにとっては、生みの親に手放されるのも、養子になるのも自ら選んだことではない。すべて大人たちの選択です。子どもはそれを受け身ではなく、積極的に運命として受け止め、人生を再建していかなければならないのです」

●子どもには愛情が必要

 作品の原題は「あなたが狂おしいほどに愛されることを、私は願っている」。フランスの詩人アンドレ・ブルトンが娘の誕生を喜び、未来の娘に宛てて書いた手紙の最後の一節だ。監督はこの文章を25歳の時に知って以来、大切にしてきたという。

「子どもが親を失う理由はさまざま。養子縁組ならすべて良しとは一概に言えませんが、子どもは愛情を受けて育つことが必要です。私にとって、養子という人生は興味深く、素晴らしい冒険でした」

 ライフワークの養子縁組。三部作の最後となる次作は養子の子ども時代を描く予定だという。

「三つの作品で養子縁組に関するあらゆる問いかけに答えたい」

(朝日新聞記者・後藤絵里)

AERA 2016年7月25日号