「いったんベースをつかんだ先には、無限のアレンジの可能性が広がり楽しい。仕事で手がけるソフトやハードウェアの開発もカレー作りも変わりません」(真吾さん)

 夫婦共に料理好き。自宅兼仕事場で「その日の料理を作る権利」をめぐって争うことも。仕事に煮詰まったときほどカレーを作りたくなると、まり子さんは言う。

「大きなプロジェクトになると、結果が出るまで何年もかかりますが、カレーは1時間もしないで結果が出る。しかも他の料理と違って、失敗がないのでストレス解消になります」

 いま長女は10カ月。離乳食を終えたら、子ども向けにスパイスを甘口にアレンジして少しずつ一緒に楽しみたいと思っている。

 スパイスカレーのレシピ本が書店にズラリと並び、食べ歩きも人気だ。とはいえ、家カレーの主流は依然カレールウを使った従来型の作り方。アエラネットなどを通じたアンケートでも、9割近くが「ルウやフレークを使う」と回答したが、7割の人がしょうゆやトマトなどの隠し味を入れ、具やルウのブレンドによってそれぞれの家庭の味を楽しんでいるようだった。いったい“よそ様”はどんなカレーを作っているのか。

●クズ野菜も一緒に

“チョコレート”をカレーの隠し味に使うというのは、専業主婦の矢野香子さん(50)。7歳と10歳の娘がおり、平日の朝食は毎日「朝カレー」だ。

「健康とエコ、時短のためです。イチロー選手が朝カレーを食べているのを知ったのがきっかけで、7年近く続いています」

 矢野さんは日ごろから食材は有機食品にこだわっている。宅配で届くと、玉ねぎはあめ色に炒め、にんじんやセロリの葉、ブロッコリーの茎などのクズ野菜と一緒に煮る。鶏胸肉は酒蒸しにし、これらをフリーザーバッグに小分けにして冷凍する。

 朝はその日のカレーに使う分だけ取り出し、電子レンジで半解凍。軽く炒ったカレー粉をからめて火にかけ、トマトジュースで酸味をプラス。チョコレートで味に奥行きをもたせ、最後に豆乳で味をマイルドにする。

次のページ