今回、加工肉はグループ1に分類されたが、同じグループにリスクが極めて高いとされる喫煙やアスベストも含まれていたため、騒ぎが大きくなった。だが、分類基準はあくまで「科学的根拠の強さ」であり、「発がんリスクの高さ」ではない。

「発がんのリスク自体は、喫煙に起因する世界のがん死亡が年間100万人なのに対し、加工肉は3万4千人。決して同等ではありません」(笹月さん)

 それでも、加工肉の摂取によりがんで死亡している人が世界に年3万人以上もいる。

「一番気にするべきは食べる量です」(同)

 IARCが評価対象とする論文の中には、大量に加工肉を食べる地域での研究も含まれているが、日本の平均摂取量は1日あたり13グラムと世界の中では最も低い水準だ。さらに国立がん研究センターが日本人約8万人を約10年間追跡した調査では、加工肉と大腸がんについての関連は見られなかった。

「つまり日本人の平均的な摂取量の範囲であれば、リスクは小さいと言えます」(笹月さん)

 逆にいえば、日本人でもハム・ソーセージを毎日のように50グラム(ハムなら5枚、ソーセージなら3本、薄切りベーコンなら3枚程度)食べる、という人は量を減らしたほうがいい。

 日本の加工肉メーカーは亜硝酸ナトリウムについて、法律で定められた基準よりはるかに少ない量しか使っていない、としている。気になる人は「無塩せき」を。ただ、何より食べる量に注意することが重要だ。

【野菜は水にさらし炒めるより蒸す】

 忙しい共働き家庭の定番メニュー「野菜炒め」に発がん性がある?

 今年2月、内閣府食品安全委員会の発表に、ギクッとした人も多いだろう。問題となっているのは、野菜などを高温で加熱調理した時に発生する「アクリルアミド」だ。

 アクリルアミドについては、これまで前出のIARCなどが「人に対して恐らく発がん性がある」と指摘してきた。今回、食品安全委は、日本人のアクリルアミドの平均摂取量を割り出し、発がんのリスクを評価した。その結果、日本人の摂取量は海外と比べて「同じか少ない程度」でリスクは極めて低いものの、「懸念がないとは言えない」と結論づけた。

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