安部さん自身の食生活は伝統的な手作りの和食で、素材の味を生かした薄味かつ少量多品目を心がけているという。

 添加物の摂りすぎで味覚が麻痺するのか、という疑問に前出の畝山さんはこう答える。

「添加物で舌の味覚受容体が破壊されることはない。添加物の問題というより、味の濃いものがよくないのは当然。特に子どものうちは刺激物は摂らないほうがいい。日本は減塩対策が遅れていて、食事量の多いアメリカ人より塩の摂取量が多い」

 畝山さんは、添加物を気にするあまり食に偏りが出ることのほうが問題だと指摘する。例えば、忙しい人には便利なカット野菜。カットした後、食中毒予防のため殺菌剤で洗ってあることが多いが、このほとんど残留しない殺菌剤を嫌って、カット野菜を使わない人もいる。

「安全性には何の問題もない。元々野菜には菌がいっぱいいて、そのままにしておくと腐る。安全性を確保しつつ便利に使えるよう添加物を使っているのに、それを嫌って栄養価の高い野菜の摂取自体を避けるほうがリスクです」(畝山さん)

●ヒジキ・玄米の無機ヒ素

 添加物を嫌がる心理の背景には、一般的に「天然だからよくて化合物は悪」という考え方があるようだ。だが、このことについても畝山さんは否定する。

「例えば鉄分の補給が必要な妊婦や子どもに、玄米菜食を推奨し、伝統食材のヒジキを毎日食べるようすすめる人たちがいますが、ヒジキは発がん性のある無機ヒ素が多いので販売が禁じられている国もあります。食物繊維が豊富な玄米も、白米より無機ヒ素が多いため子どもにはすすめられません」

 添加物に関しては何よりも、イメージに踊らされない正しい知識が必要だ。(編集部・大平誠)

AERA 2016年7月25日号