●各地の神社で改憲署名

 そう、少し前まで日本会議に集うような宗教右派は、極論を唱える「危ない勢力」と認識されていた。だが、中国の経済成長などで日本の国際的地位が相対的に低下し、国内でも格差や貧困が広がり、不安や焦燥が社会を覆うなか、日本会議的な主張に共感する層はうっすら広がっている。何よりも安倍政権の存在が彼らを勢いづけている。

 椛島氏は、安倍政権誕生後の運動について、こんなふうに語ったこともある。

「日本会議は阻止・反対の運動をする段階から、価値・方向性を提案する段階へと変化した」

 その日本会議が現在、総力を挙げて取り組んでいるのが改憲に向けた運動である。戦後体制を憎悪する日本会議にとって、現憲法は唾棄すべき戦後体制の象徴であり、同じ方向を向く安倍政権下こそが改憲の最大チャンスと捉えている。フロント組織である「美しい日本の憲法をつくる国民の会」を立ち上げて発破をかけ、1千万人を目指して全国各地の神社の境内でも改憲賛成の署名集めが行われたほどだ。本稿執筆時点では参院選の結果は不明だが、その結果次第では改憲が具体的な政治スケジュールに上ってくる。戦後70年の歩みは、現政権と“宗教右派の統一戦線”によって突き崩されてしまうのか。時代の大きな分水嶺である。(ジャーナリスト・青木理)

【日本会議の役員を代表者などが務める宗教団体】
神社本庁
伊勢神宮
熱田神宮
靖国神社
明治神宮
岩津天満宮
黒住教
大和教団
天台宗
延暦寺
念法眞教
佛所護念会教団
霊友会
国柱会
新生佛教教団
崇教真光
解脱会

※アエラ編集部が2016年1月、日本会議との関係が取りざたされている宗教団体に取材・アンケートした。無回答でも、日本会議のホームページなどで確認できた団体は掲載した

AERA 2016年7月18日号