●日本の少女文化の系譜

 日本一とも言われるオサムグッズ・コレクターで絵本編集者の土井章史さんに教えていただく。今回の千点あまりの展示のうちおよそ700点は土井さんのコレクションだ。80年代にはすでに社会に出て働き、女子でもない土井さんがなぜそれほどハマったのか。

「最初は正直、女子どものもの、みたいな意識はありました。でもだんだん年を取ってきて素直に“あら、かっこいいじゃん。デザインが全部いいし”と思えるようになってきた。女性は頭じゃなくて身体的に即座に“かわいい”と感じることができて、それがすごく大切だと思うんです。こんなセンスの良いものを、女子中高生がなけなしのお金を出して買っていた、という事実が良い。と同時に、なるべく多く集めたいと思うのは、そこはやっぱり男の気分なのかもしれません」(土井さん)

 誕生から40年が経ち、80年代のティーンエイジャーは40代以上になり、それぞれに散っていったオサムグッズたちが、今度は学校でもショップでもなく美術館という場所で再会する。今回の展示は40年越しのマンモス同窓会でもある。

●新鮮で懐かしい

 弥生美術館では日本のかわいいもの文化を探求し続け、竹久夢二、中原淳一、松本かつぢ、戦後では内藤ルネ、水森亜土、田村セツコなどの展覧会を開催してきた。日本には大正時代から人気イラストレーターの絵をあしらった小間物や文房具を愛でる少女文化があり、オサムグッズもその系譜に連なるものと確信していると、内田さんは言う。

 今回の展覧会では原画や初公開資料などを多数公開するほか、会場限定グッズ(復刻スクールバッグ!)や展覧会公式グッズの販売もある。9月22日には原田さんが来場してトークショーとサイン会も予定されている。

 ファンにはあまりに懐かしく、若い世代には新鮮、そして母娘で出かけるのに最適のこの催しは7月1日にスタートしたばかり。9月25日まで開催中だ。(ライター・北條一浩)

AERA 2016年7月18日号