懐かしのランチグッズが勢ぞろい。お昼時、カバンから出すあの高揚感がよみがえる(撮影/写真部・加藤夏子)
懐かしのランチグッズが勢ぞろい。お昼時、カバンから出すあの高揚感がよみがえる(撮影/写真部・加藤夏子)
古き良きアメリカを思わせるデザインには、アメリカンファーマシーに通う生粋のシティーボーイだった原田さんの感性が反映されている(撮影/写真部・加藤夏子)
古き良きアメリカを思わせるデザインには、アメリカンファーマシーに通う生粋のシティーボーイだった原田さんの感性が反映されている(撮影/写真部・加藤夏子)
「ジャックとジル」はじめ、オサムグッズのキャラクターが「マザーグース」に由来することは案外知られていない(撮影/写真部・加藤夏子)
「ジャックとジル」はじめ、オサムグッズのキャラクターが「マザーグース」に由来することは案外知られていない(撮影/写真部・加藤夏子)

 80年代ガールズカルチャーを席巻したあの「オサムグッズ」が一挙に千点も大公開! ファン感涙の展覧会「オサムグッズの原田治展」が東京の弥生美術館で始まった。

 陰りのない明快なタッチ。有無を言わせぬかわいらしさとキャッチーな存在感。原田治さんが描くイラストレーションは、文具や陶器類、布製品などのファンシーグッズと驚くほど良くマッチした。1980年代、学校の中で、通学の途中で、いったいどれほど多くのオサムグッズを目にしたことだろう。当時の女子中学生・高校生たちは(時には男子も)、世間で派手に宣伝されていたわけでもないオサムグッズの魅力に敏感に反応し、瞬く間に必携アイテムになっていった。原宿のキデイランドなどで販売され、80年代後半にはオサムグッズの売り上げが年間で500万個、20億円を記録していたという事実も、実感として納得できる。

●文房具は「自己表現」

 弥生美術館の学芸員・内田静枝さんは69年生まれ。80年代に少女時代を過ごしたオサムグッズ世代だ。

「女子中高生にとって、文具やランチアイテムは自分を表現する一つの手段です。数あるキャラクターの中でもオサムグッズ派だった私は、後に優れた審美眼を持つ芸術家が自分の知力と感性を尽くして創り上げたものだということを知り、自分の少女時代がよきものであったことを確認して幸せな気持ちになりました」

 そして同世代の女性たちにも伝え、喜びを分かち合わなくては、との思いがむくむくとわき上がり、今回の展覧会開催の原動力になったという。

 ちなみにオサムグッズを厳密に定義すると、イラストはもちろん、デザインも原田さんが手がけたものを呼ぶ。例えばミスタードーナツの景品(まずこれを思い浮かべる人も多いかもしれない)の場合、ライセンス契約を交わしただけでデザインにはタッチしていないので、実はオサムグッズではない、ということになる。

「オサムグッズは、76年につけまつげで有名なコージー本舗が発売を始めました。当時のコージー本舗の社員が原田さんのイラストに惚れこみ、グッズにしようと口説いたんです。その後、オサムグッズ販売のためにダスティミラーという会社を立ち上げました。だから古いオサムグッズには『ダスティミラー NEWYORK-TOKYO』というクレジットが入っています」

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