胃の内視鏡検査を行う二子玉川メディカルクリニック(東京)の伊井和成院長(右)。内視鏡検査は医師が行う必要があり、その技量も問われる(撮影/写真部・大野洋介)
胃の内視鏡検査を行う二子玉川メディカルクリニック(東京)の伊井和成院長(右)。内視鏡検査は医師が行う必要があり、その技量も問われる(撮影/写真部・大野洋介)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)
5大がんの検診、メリットとデメリット(医療法人嘉健会思温病院・狭間研至院長監修)

 気づいたときには、体をむしばんでいることも多いがん。早期発見には検診が有効と言っても、その方法はさまざまだ。どの検診を、どう受ければいいのか。

 東京都府中市の都がん検診センターでは6月半ば、乳がんについての問い合わせが増えた。連日、メディアで小林麻央さん(33)のがんが報道されていた。

「うちの娘に、乳がん検診を受けさせたい。心配でたまらない」

 同年代の娘を持つ母親が、不安に駆られたようだった。

 がんとはどんなものか。人間は数十兆個の細胞からできている。それらの細胞が傷つき、修復をくり返すうちに細胞の遺伝子に変異が起こることがある。そうした細胞が異常に増殖して「がん」になる。一般に細胞の働きが活発な若い人のほうが、進行が速いと言われる。

●対象厳格な住民検診

 一言でがん検診と言っても、自治体が費用を負担し、対象者が住民検診として無料か低額で受けられる「対策型」検診と、個人が費用を負担し人間ドックとして受ける「任意型」検診がある。自覚症状のない健康な人が、ある特定のがんにかかっていないかを調べるために受けるという点は一緒だ。

 住民検診は、検診を行うがんの種類と検診方法、検診を受ける対象者が定められている。現在実施されているのは、胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの五つが対象だ。

「その検診を行うとがんを早期発見できることがわかっていて、痛みやリスクなどデメリットを上回るメリットがあり、費用対効果も優れている検診を、リスクのある年齢層に対して実施するというのが、住民検診の基本的な考え方です」

 と、医療法人嘉健会思温病院(大阪市)の狭間研至院長は解説する。

 一方、人間ドックは自費診療ではあるが、気になるがんを気になるときに希望者が受診できる。CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴断層撮影)、PET(陽電子放射断層撮影)など先端機器を用いる検診機関も増えている。

「住民検診の対象年齢でなくても、身内に特定のがんが多いので注意したい場合や、より詳しい検診を望む場合に受ける人が多いようです。ただし最先端機器を用いれば、検診費用が高くなることもあります」(狭間院長)

 検診の方法にはそれぞれ特徴があり、金額が高いほど精度が高いとは限らず、誰にでも向いているわけでもない。検診の特徴を知り、適切に選ぶことが重要だ。そこで、主ながん検診の種類と特徴を見ていこう。

●住民型も胃カメラOK

 胃がんの住民検診は、胃部X線検査、いわゆるバリウム検査が主流だったが、今年4月に厚生労働省の指針が変わった。

「対象は50歳以上、頻度は2年に1回で、従来のX線検査に加え、胃内視鏡検査も住民検診として認められました。ただし当分の間、40歳以上を対象にしたX線検査も年に1回の頻度で受けられます」(都がん検診センター・富山順治所長)

 胃内視鏡検査は、内視鏡を口や鼻から入れて胃の中を観察する。出血も観察でき、X線では見つけにくい平坦型のがんなどの発見率も高いという。麻酔を使えば、嘔吐感やのどの痛みが和らぐため、身体面の負担も小さくなりつつある。

 現場では以前から、「胃がん検診には内視鏡検査を」という医師の声はあった。ただ、技師が行えるX線検査に対して、内視鏡検査は医師が行わねばならず、住民検診として数をこなす上で課題もあった。

 最近では、胃がんの将来リスクを調べる検査として、胃がんにかかわると言われるヘリコバクター・ピロリ菌検査とペプシノゲン検査を採り入れる人間ドックも増えている。

「胃がんの有無を調べるには、ピロリ菌などのリスク検査をしたうえで、必要なら内視鏡検査に進むのが最も有効なプロセス」(検診医師)と考える医師もいる。

●手軽なカプセル内視鏡

 内視鏡検査は、患部の状態を直接観察でき、組織を採る生体検査も同時にできるため、大腸がん検診でも注目されている。

「大腸内視鏡は、がん化する前のポリープや炎症、出血部も見つけることができるなど、メリットが大きい。ただし、腸管洗浄剤を飲まねばならず、検査時に腸を傷つける恐れもあるなど、身体的負担もあるので、検診手段として誰にでも勧められるわけではありません」(前出の狭間院長)

 こうした課題のある大腸内視鏡にも新しい検査方法が登場している。

次のページ