最近の動きとしては、「卵巣バンク」が始まろうとしている。事業主体はレディースクリニック京野(仙台市)。国内で卵巣組織凍結を実施できる20程度の医療機関のうち、いくつかと連携し、保存のみを専門に行う。理事長の京野廣一医師は言う。

「地元に卵巣凍結の実施施設がなくても、妊孕性の温存がしやすくなればと考えています」

 ほかのクリニックと提携して、宮城、東京、関西の3拠点で卵巣組織を保存する。料金は、移送費と1年間の保存費用が10万円で、2年目以降は更新料金がかかる予定。ほかに、卵巣採取の手術費など数十万円が必要になる。現在、日本産科婦人科学会の倫理委員会に申請中だ。

 がん患者の妊孕性温存の技術は、徐々に広がってきている。だが、早期発見・早期治療の大切さを忘れてはならない、と前出の鈴木医師は強調する。

「子宮頸がん検診は必ず受診を。定期健診に含まれない子宮体がんや卵巣がんの早期発見、がん以外で妊孕性を失うことがある子宮内膜症や良性腫瘍などの早期治療のために、かかりつけの婦人科を持ってほしい」

(ライター・越膳綾子)

AERA 2016年7月11日号