北海道帯広市で今、がん予防で注目されている体操がある。その名は「オビロビ」。「おびひろエアロビクス」の略称で、市が独自に考案した。

 基本は足踏みだが、片足立ちやスクワットなど、音楽に合わせ10分ほど体を動かしつづける。

「一度で50キロカロリー近くを消費できます」

 と、オビロビを考案した、健康運動指導士で市健康推進課主査の長谷川昌二さん(45)。がん死亡率の高い同市は13年から、健康増進計画の重点課題の一つに「がん対策」を掲げた。適正体重を保つ手段として、健康運動指導士を配置しオビロビでがん予防を目指している。

 運動は、がん予防の決め手の一つだ。大腸がんのリスクを「ほぼ確実」に下げ、乳がんリスクも下げる「可能性あり」だ。

 津金氏によれば、体を動かすことで腫瘍増殖を促進する作用があるインスリンの分泌が抑えられるためだという。また、運動で便通を整え、発がん物質が腸管粘膜に触れる時間が短くなる効果などもあると考えられている。

 かと言って、激しい運動はNG。体内に活性酸素などのフリーラジカルを発生させ、逆に細胞を傷つけてしまう可能性がある。理想的な運動は、1日計1時間程度の歩行と、週1回の汗をかく程度の運動だ。

 では、理想的な体形とはどのようなものか。

「肥満は万病の元」などといわれるが、ならば、やせればいいかと思いきや、

「やせすぎている人こそ注意が必要です」(津金氏)

 栄養不足による基礎代謝や免疫機能の低下などが、がんの発生に関与してくるそうだ。とくに男性は、BMI(肥満指数)21未満は、同23~24.9のグループに比べ、がんの死亡リスクは17%高い。女性も若い頃やせているとその後、乳がんの発生リスクが高くなるというデータが報告されている。津金氏が推奨する体形は、中高年では、男性はBMI21~27、女性は同21~25の維持だ。

「普段から体をよく動かし、太りすぎずやせすぎないことが、がんを防ぐために大切なのです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2016年7月11日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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