中心となったのが「食生活改善推進員」、通称「食改さん」だ。松本市に住む三好美恵さん(66)もその一人。食改さん歴約20年。月に1回ほどボランティアで料理教室を開き、塩分を控える食事などの指導をしている。

「理想の食塩摂取量は、何グラムと重さで言ってもわかりません。食べて濃いと思ったら、薄味にしてくださいね」(三好さん)

 こうして長野県の1日の食塩摂取量は、80年は15.9グラムだったのが、13年には10.6グラムと3分の2に減った。食改さんは長野県全体で約3500人。時には家に上がり込んで、味噌汁の塩分濃度を測ることもあるそうだ。

「地道な活動ががんの発生を抑えたりして、長寿の要因となっているのではないでしょうか」(松本市健康づくり課)

 食塩を控える以外に、がん予防に効果がある食生活は何か。同センターはどんな生活習慣ががんのリスクを上げ下げするのかを評価している。

「ほぼ確実」に肝がんのリスクを下げるのはコーヒー。ほとんど毎日飲むと発生率が約50%、1日5杯以上で約70%リスクが減るというデータもある。

 ただ、熱い飲食物は、食道の粘膜を傷つけるので食道がんのリスクを「ほぼ確実」に上げる。熱いお茶やコーヒーが好きな人は、なるべく冷まして飲んだほうががんリスクを下げることになる。熱い茶粥を食べる習慣のある奈良県や和歌山県で、かつて食道がんの罹患率が高かったのはこのためと考えられている。

 ほかにも野菜は胃がんのリスクを下げる「可能性あり」、果物は胃がんと肺がんのリスクを下げる「可能性あり」と評価されている。魚は子宮頸がん、女性が緑茶を飲むと胃がんのリスクを下げる可能性もある。

 ただ、いくら魚はいいとはいってもこげはよくない。こげた部分にはヘテロサイクリックアミンという発がん物質が含まれ、これを化学的に合成して実験動物に与えたところ、発がん性が確認されている。だが、この実験を人間に当てはめると、毎日茶碗1杯もの焼けこげを食べ続けるようなものなので、極端に心配することはなさそうだ。

 それよりも「バランスのいい食事が大事」と津金氏。

「塩分を控え、例えば、魚を食べた翌日は鶏肉にして、その翌日は牛肉にする。こうしてバランスのよい食生活を送ることが、結果的にがんの予防や健康長寿につながります」

■1日1時間の歩行が理想やせすぎもリスクは大

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