働いていたカフェバーで雑誌のモデルにスカウトされると、20代半ばでドラマデビュー。祖父母はその成功を見届けることなく亡くなった。

 人気に火がついた頃、時代はバブル絶頂期だった。十分な演技経験もないまま、次々とドラマ出演が決まっていく。高級車を買い、住む家も大きくなっていった。一方で、「こんな日々はずっと続かない」と冷静に分析する自分がいた。

 あるだけ使ってしまうのが怖くて、ギャラは事務所に預けていた。投資話を持ちかけられても見向きもせず、俳優の仕事を続けたい一心で、演技の勉強にコツコツと打ち込んだ。結果、トレンディードラマブームが去っても、刑事ドラマから時代劇まで幅広い役柄を演じられる役者として、浮き沈みの激しい芸能界で「サバイブ」してきた。その姿は、虫の足をかじっても、徘徊する祖父の介護をしていても、「淡々と現実と向き合い、次の行動を起こしていた」という少年時代の風間さんと重なる。

 苦労は人間を逞しくする。貧乏だった子ども時代の頃を笑い話に変える風間さんの姿そのものだ。

「今の時代の子どもたちは、物がありすぎて、周りの同年代とすぐ比べてしまう。でも、人と比べないで、自分なりの独創性があると、目の前の現実がどうであれ、いろんな可能性が広がります。それが自信につながって、人間を強くしてくれると思うんです」

(編集部・山口亜祐子)

AERA 2016年7月4日号