ソフトバンク・孫社長はなぜ突然「後継者」を捨てたのか

山田厚史AERA
「少なくとも5年、おそらくは10年近く社長でいたい」

 6月22日、東京都内で開かれたソフトバンクグループ(SBG)の株主総会。孫正義社長(58)は愛嬌交じりの口調で、ニケシュ・アローラ副社長(48)が退任に至った理由を語った。

 グーグル副社長だったアローラ氏を2014年にスカウトしたのは孫社長自身だ。15年度は約80億円と、孫社長の60倍を超える巨額の報酬を払い、「後継者の筆頭候補」と公言。60歳の誕生日で潔く社長から退くつもりでいたという。

 ところが、「あと1年になって欲が出た」。孫社長は総会に来た株主にこう語った。

●40年後を想像しきれず

 孫社長は米カリフォルニア大学バークレー校に在籍していた19歳のとき、「人生50カ年計画」を立てている。

 20代で自分の事業を始め、名乗りを上げる。30代で最低1千億円の軍資金をためる。40代、ここぞという一発勝負に出る。50代、大事業を成功させ、60代で次の経営者にバトンタッチする。

 気宇壮大な計画だが、その通りに実行してきた。だが19歳の青年には、意欲・能力満タンな将来の自分を想像できなかった。

「仕事好きの孫さんは激動のIT事業が面白くてやめられない。だがアローラさんは5年も待てない。退任しかなかった」

 孫社長に近い人は話す。だとしても、なぜ総会前日なのか。アローラ氏が副社長に留任する議案書はすでに株主に配られていた。ここまでの土壇場で人事が動くのは、よほどのことだ。

 しかし、後継を巡る暗闘が総会直前までもつれ込み醜態をさらしたと見る人は、実は少ない。

●日本流との軋轢頂点に

 孫社長は世界を駆け回る経営者だが、東京・汐留に本社を置くSBGは依然として、日本人中心の会社だ。

 インドで生まれ21歳で米国に渡ったアローラ氏は、電気工学や経営を学び、IT業界で頭角を現す。グーグルでは営業・マーケティング・提携戦略の最高責任者を務めた。孫社長は「SBGに足りないグローバルな視点を補う人材」とほれ込んだ。

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