個人型DCの口座は大手証券、ネット証券のほか、都市銀行や地方銀行、信用金庫で開設できる。店舗に出向かなくても郵送で手続きは可能だ(撮影/写真部・小原雄輝)
個人型DCの口座は大手証券、ネット証券のほか、都市銀行や地方銀行、信用金庫で開設できる。店舗に出向かなくても郵送で手続きは可能だ(撮影/写真部・小原雄輝)
個人型DCの手続きの手順
個人型DCの手続きの手順

 個人型DCの紹介サイト「個人型確定拠出年金ナビ」を運営するNPO法人確定拠出年金教育協会の大江加代理事兼主任研究員は「改正法の成立後から、アクセスが従来の7倍」と驚く。

「専業主婦からの問い合わせも多く、関心の高まりを感じます。金融機関もこれまでは片手間という印象がありましたが、最近はウェブサイトを充実させたり担当部署を新設したりするところも出てきました」

 ネット証券大手のSBI証券は法改正を見越して、4月に個人型DC口座で運用できる投信を大幅拡充した。りそな銀行でも、全店舗で相談と申し込みを受け付ける体制を整えた。

「短期的な利益は出ないが、案内すると『こんな有利な制度があったなんて』と大変喜ばれる商品。加入してもらえば長い付き合いになり、個人客のすそ野拡大につながります」(りそな銀行信託ビジネス部・森裕司氏)

 法改正を受け、金融機関の姿勢も変わってきているようだ。

 そもそも、個人型DCは自営業者や企業年金のない会社員など、年金が手薄な層だけが加入できる「特権」だった。それが今回の法改正で、企業年金制度がある企業の会社員や公務員、専業主婦まで、一部の例外を除きすべての現役世代に対象が拡大される。この背景について、大江英樹氏はこう分析する。

「厚生年金や国民年金は今後、支給額が減ったり支給開始年齢が遅くなったりする可能性が高い。『有利な制度を用意するから、公的年金だけに頼らず自分でも老後資金を準備しなさい』という政府のメッセージだと解釈できます」

●公的年金には頼れない

 山崎氏も、こう警告する。

「公的年金は、生活の基礎的な支出に回せば底をついてしまうでしょう。長い老後を安心して過ごすためには、公的年金に上乗せする生活資金を現役時代にコツコツ貯めておくしかない」

 少子高齢化により、現役世代が高齢者を支える公的年金の仕組みは限界に近づいている。これだけの税制優遇を伴う制度を大盤振る舞いする背景には、公的年金だけでは老後の生活が立ち行かない未来が近づいている現実があるのだ。

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