黒木:自分のビジョンやキャラクターのイメージを現場でスタッフに伝えるのが、とても難しかったです。対照的な2人のキャラクターについては、そのどちらの中にも自分がいる、と感じながら演出していました。

フォスター:私にもその感覚があります。監督した作品の全ての登場人物に自分が反映されている。男性の監督が女性キャラクターの心理に入り込むことができずに戸惑っていると感じることがあるのですが、女性はごく自然に、自分ではない誰かの視点に入り込めますよね。

黒木:「マネーモンスター」に出てくる女性キャラクターは、すごくかっこよかった。

フォスター:ありがとうございます。お金や名声でしか自分の価値をはかれずに葛藤する男性に対して、自分なりの価値観という強さを持ち合わせているのが女性。そんな女性たちが、男たちにけしかけるわけです。「なるべき男になれ」、と。

●ゴールなんか必要ない

黒木:ジョディさんは小さい頃から、監督をしようと思っていらしたんですよね?

フォスター:6歳のときテレビ番組に出演していたら、共演の役者さんが監督として演出もしていたんです。大人になったら私もやりたい、と思いました。

黒木:次に撮りたい対象は?

フォスター:年を重ねるごとに興味の対象は変化するし、映画を1本完成させると「その題材について言いたいことを言い切った」という気持ちになるので、次に自分が何に興味を持つのか、まだわかりません。ただ、監督をやるとなると、100%その映画にコミットして、人生の何年かを費やすことになる。自分にとって意味深い、パーソナルな題材を選ぶべきだと思っています。個人的な思い入れがなければ、「衣装は青か緑か」と聞かれても答えられないですから。

黒木:私がもう一度監督するかどうかは、ジョディさんに決めてもらおうかな。見ていただいて、やめたほうがいいと言われるのか、もっと頑張れとおっしゃっていただけるのか……。

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