「今日の標準的な治療から見た医学的妥当性と、ほかに治療の選択肢があるかを意見書に記します。薬物療法だけでなく、生活リズムを整え、良質の睡眠をとる方法を提案することが多いですね。お酒を飲んでいる患者なら、断酒指導もします」(同)

 意見書の最後には、「当科に転医も可能です」と書き添える。元の主治医で継続して治療を受けるのも、井原医師の外来に移るのも患者の自由だ。

「医療機関を変えたいが迷っている人にもお勧め。いきなり転医する前に、どんな医師か知るために使うのもいいでしょう」

 精神科の治療は、患者の状態によっても、医師の方針によっても、微妙に異なる。治療の正誤の絶対的な基準はない。それだけに、主治医とは異なる意見を聞けることの必要性は高い。

「どんな医師にも誤診は起こり得るという前提で医療システムを作ることが重要。医師の競い合いではなく、主治医、セカンドオピニオン、患者の3者で情報を共有し、医療の水準を上げるためのものです」(井原医師)

(ライター・越膳綾子)

AERA 2016年6月20日号