「保護」に甘んじない、主体的な働き方が…(※イメージ)
「保護」に甘んじない、主体的な働き方が…(※イメージ)

「資生堂ショック」は、女性たちに動揺を広げた。評価されたい。一方、家族の時間を犠牲にしたくない。「保護」に甘んじない、主体的な働き方が、それを可能にする。

<子どもとの時間を確保したいから短時間勤務をしている。頑張って効率よく働いているつもりだが、私はお荷物社員ではないかと思ってしまう。活躍したい女性の足を引っ張っているのではないか>

 4月に朝日新聞に掲載された神奈川県の会社員女性(40)の投書は、女性活躍推進ブームに違和感を覚えるというものだった。反響を呼び、6月8日には同紙で共感の声などが特集された。

 4月に女性活躍推進法が施行され、従業員301人以上の企業には女性活躍に関する行動計画の策定が義務付けられた。企業や社会が女性にチャンスを提供する流れになってきているのだが、求められている「活躍」とは何なのか。子育て中などの理由で働ける時間に制約がある女性たちには、戸惑いもある。

 公益社団法人で管理職を務める女性(42)は、いま契約社員として働いている女性を、正社員に登用したいと思っている。小学生の子どもを育てながら効率よく働く彼女の仕事ぶりは優秀で、責任感も強く、正社員以上の役割を半分の給料でこなしている。残業代を目当てにダラダラ働き、エクセルすら覚えようとしない正社員たちの手本になるはずだと考えた。

●1日8時間がマスト

 彼女の登用を男性上司に打診すると渋られた。正社員にするには「1日8時間のフルタイム勤務」がマストだと譲らない。

 フルタイムは午前9時から午後6時までの勤務。通勤時間を含めると、子どもの生活リズムや家事を成り立たせるのにはギリギリだ。さらにこの男性上司は、「能力」ではなく「時間」で貢献することばかりを期待する。

「残業できないだろう」

「繁忙期に休まれたら困る」

「急なトラブルに対処できないのでは」

 これまで彼女は、子どもが病気になってもベビーシッターに預けて出社していたが、そんな努力や時間あたりの生産性はまったく評価されない。仕事のできない正社員が、ただ時間制約がないという一点だけで高い給料と残業代とボーナスを手にするのは、人件費の面でも損ではないのか。この管理職女性が、成果を出していない正社員のボーナスをもっと減額すべきだと上司に提案すると、

「でも、彼の子どもは大学生になったばかりだから」

 と、男性社員の「家庭の大黒柱」としての事情だけは考慮する。彼女が契約社員なのは、出産や育児のために正社員のレールから外れたからなのに。

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