「親の病気のせいで子どもに迷惑をかけ、情けない気持ちでいっぱいになります」(Cさん)

 小山さんは、限られた中で選択肢を増やすには、まず行政など相談窓口に行き、次にアクションを起こすため支援先を知ることが重要と説く。リトルワンズは、シングルマザーたちにとって、頼れる選択の一つとなっている。スタッフが相談に乗り、生活のサポートを行いながら、場合によっては、心理カウンセラーや弁護士など専門家につないでいく。

「日本では、うつ病をはじめとした精神的問題は自己責任とされることが多い。その結果、孤立し、さらに自分を追い詰めることになります」(小山さん)

 前出の近藤教授は、うつを減らすには、話を聞いたり支えたりする周りの人々によるサポートが大切だと話す。

「国にしかできないのは、社会保障を強化し、所得の再分配を強め格差を小さくすることです。北欧など所得格差の小さい国ほど国際競争力や経済成長率も高い。経済成長のためにも、貧困と格差の問題を改善していくべきです」(近藤教授)

 病気、リストラ、離婚介護。低所得の背景にある非正規労働も拡大している。リスクはどこにでも潜む。所得が減ると、今はそうでない人も、うつになりうる。さらなる対策を講じる時期にある。(編集部・野村昌二)

AERA 2016年6月20日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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