まず、資産2400万円に対して負債が2千万円と多めだ。資産合計に対する負債合計の割合は0.8。誰でも病気や失業、事故によって収入が大きく減ったり、災害に見舞われたりする可能性がある。資産に対する負債の割合が高いほど、アクシデントに遭ったときに家計が行き詰まる可能性が高くなる。やりくりが苦しくなったとき、資産を手放して必要な支出に充てる余地が限られてしまうからだ。0.5以下を目標にすべきだと河合さんは言う。

●家族でオープンに議論

「もしものとき」の備えとしては、資産のなかでも現金や預金、保険、株式や投資信託といった、すぐに現金化しやすい「流動資産」の比率を高めたほうがよさそうだ。簡単には現金に換えられない自宅などよりも、急な出費に充てやすいからだ。

 BSに「悪い負債」があると思われるのも問題だという。河合さんは、家計の負債を良いものと悪いものに仕分けることを提唱している。「安心して住めるマンション」のような、家族に役立つ資産を買うための住宅ローンは、良い負債。一方、資産形成につながらないうえ、「いま行かなくてもよかった」と後悔するような家族旅行にクレジットカードの分割払いを使ったら、悪い負債だ。

 ただ、資産形成につながらなくても「家族の大切な記念日に合わせたちょっとぜいたくな旅行」なら「良い」と判断してもいい。要は家族で話し合って価値観をすりあわせたうえで、「悪い」と判断した負債はつくらないようにする、ということだ。

 BSが、家計簿からは見えなかった課題をあぶり出してくれることはわかった。これを活用した家計の改善法として、河合さんは次のようなやり方を提案している。

 BSとともに、家計簿をもとにした年間収支表を1年に1度は作る。収支表は、家計簿をつけ続けるのが面倒なら「3カ月だけ記録して数字を4倍にする」といったやり方でもいい。それらを見ながら家族でよく話し合い、「大きな買い物はそのための貯蓄をしたうえでする」「今年のボーナスは悪い負債の解消に充てる」といった大まかな方針を決める。この方針に沿って作った年間予算の範囲内で家計をやりくりする──。

「家計について、子どもも含めて家族でオープンに話し合う雰囲気をつくることが大切です。うまくいっている家族ほど家計はきちんと回るものです」(河合さん)

(編集部・庄司将晃)

AERA 2016年6月13日号