消費生活アドバイザーとして多重債務者の支援に取り組み、ファイナンシャルプランナーの資格も持つ河合直美さんはそう指摘する。「見える化」の切り札となるのが、家計バランスシート(貸借対照表、BS)だ。

 BSの右側は「どのようにお金を集めたか」、左側は「そのお金を何に投資しているか」を示している。

 日本ファイナンシャル・プランナーズ協会のサイトにある家計BSのひな型に書き込んでみよう。サイトからエクセル版をダウンロードすることもできる。

●住宅も車も「時価」で

 まずBSの左側に現金、預金、自宅、自動車といったこれまでに築いた「資産」を並べる。入手時の価格を書いても意味がない。少し面倒でも時価を調べて記入することが重要だ。

 持ち家なら不動産業者の広告で近所の似たような物件の価格を、マイカーであれば中古車販売業者の広告で車種や走行距離がほぼ同じ車の値段を、株式や投資信託はネットで最新の価格をそれぞれ調べる。保険の場合、解約したらいくら戻ってくるかを保険会社に問い合わせる。

 BSの右側には、「他人に返す義務がある」負債から書き込んでいく。各種のローン残高の明細を確認し、生計が別なら身内からの借金も計上する。

 最後に、資産合計から負債合計を差し引いた額をBSの右下の「純資産」の欄に記入すればできあがり。BSの左右の合計額は一致する。純資産は「BSの左側の資産をすべて売り払い、右側の負債を完済した後に残る金額」を意味するのも、企業のBSと同じだ。

 さて、このようにして作ったBSから何がわかるのか。今度は、河合さんの話をもとに創作した困田(こまった)家の例を見てみよう。

 サラリーマンの夫(36)、自宅でフラワーアレンジメント教室を開く妻(34)、長男(5)の3人家族。夫の年収500万円に対し、妻は150万円ほどで不安定だ。2年前にマンションを購入。共働きで収入もそこそこあり、住宅ローンの返済も順調。家計の現状に対する危機感はあまりない。しかし、河合さんがBSを分析してみると、問題点がいくつか浮かび上がってきた。

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