「義母の説得が大変でした。義母は国立大を出た後、専業主婦としてひとり息子の教育に情熱を注ぎ、東大にまで入れた。嫁は、当然同じ道を選ぶと思っていたようです。夫に連日のように文句を言う電話をかけてきて、私もげんなりしました」

 とはいえ、ミキさんは都内のお嬢様系の女子大出身。大学時代の友達には「バリキャリ」は皆無で、多くはセレブ妻となって子どもの英才教育中だ。

「私自身、その価値観を持ってはいます。仕事が好きだし、出産しても働くのが当たり前の職場だけど、自分の本当の価値観とは違うような気もして……」

●均質社会で差別化する

 学歴とは、本人の学力を測るひとつの目安ではあるが、人の価値や生き方まで決めるものではないはず。それなのに、なぜ、人は学歴にしばられるのだろうか。学歴とアイデンティティーの関係を研究している大阪市立大学大学院の池上知子教授(社会心理学)は言う。

「人は誰でも、他人にはない『自分』を求める気持ちがあり、無意識に相手との違いを探します。けれど、日本は均質化の高い民族です。宗教の違いは大きな問題とならず、肌の色もみんな同じ。他者と差別化する手がかりとして、学歴が一番わかりやすい」

 学歴が周囲より少しでも「上」であることは、自尊心の維持に有効だという。池上教授は、

「学歴は、親の力で与えられたものであっても『自分は選ばれた人間なんだ』というアイデンティティー形成がなされる場合がある。親の経歴を自慢し、『すごいね!』と言ってもらうことで自分の価値を確認しようとする人が、このパターンです」

 これが大学自慢をする人たちの深層心理なのだろうか。

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