例えば、タクシーの利用について明確な会社規定はないが、徒歩15分程度で行ける距離をタクシーに乗ったときは自腹。徒歩30分程度の距離で使った場合は経費精算する。会社から説明を求められても、「タクシーでしか行けませんでした」と、正々堂々と理由を言えるからだ。

「逆に言うと、説明できなかったり嘘をつかないといけなかったりする経費は『アウト』だと思います」(Bさん)

 東証1部上場メーカー部長職の男性Cさん(53)も、「何万円とか具体的な基準はありません」と話すが、「自分で納得できない場合は自腹を切る」がポリシーだ。

 部長ともなると経費精算の裁量権も大きくなってくるが、だからこそ自分を厳しく律するのだとCさん。例えば、顧客と会食して帰りが遅くなったとき、普段は自宅の最寄り駅から家までバスを使うが、早く帰宅したいと思いタクシーを使うとタクシー代の約1500円は自腹。会社に請求すれば経費として認められるだろうが、それは自分のポリシーが許さない。

「経費は企業活動をするうえで必要なお金。だけど、限られた予算内で賄うものなので、なるべく使わず、安く済ませたい」(Cさん)

 この涙ぐましい経費削減努力。アンケートでは「あなたは舛添知事の政治資金の使途を許せますか?」とも聞いたが、80%が「許せない」と回答した。

(編集部・野村昌二、小林明子)

【アンケート結果】
(2016年5月20~26日、アエラネット会員などに調査。男女44人が回答)

■経費で贅沢できるの?
・高級レストラン豪遊もすべて「打ち合わせ」。どこまで経費にできているかは税理士さんにお任せしていますのでわかりません(自営/通訳/40代/女性)

・昔、伝説の営業部長が、帰省時の高速代、ガソリン代やマイカーのタイヤ交換代まで経費で落としていたことが露見。不祥事のたびに規則が厳しくなっていく(一般社員/メーカー/40代/男性)

・期末間際で接待予算が余っている時に課内で飲みに行き、上司の指示で「取引先接待」として精算し、予算をほぼ満額消化(管理職/コンサルティング/60代/男性)

・出張の際には極力、グリーン車、一流ホテル、高級レストランを使う。認められる経費との差額は自己負担だが、そこから得られるサービスや一流の方との出会いは代えがたい(管理職/メーカー/30代/男性)

■こんなものまで自腹で…
・海外出張で必要なカメラとノートパソコン(一般社員/メーカー/50代/男性)

・最終の新幹線の後に仕事が終わったのに、翌日が休日だったため日帰り扱いにされ、宿泊費1万円が落ちなかった(一般社員/メディア・広告/30代/女性)

・出張先や直営店舗などへの差し入れ。礼儀なので精算にはなじまないと判断(管理職/流通・小売り/40代/男性)

・自分のミスでかかった費用、約7万円。上司に説明するのが嫌だったので(契約・派遣/運輸/40代/女性)

・上司の食事代を接待交際費で処理しろと言われたけどできず、数万円の自腹。管理職の私がやったらおしまいでしょう。社内では懲戒対象。でも役員は自由です(管理職/流通・小売り/50代/女性)

・生徒宅へかける電話代(公務員・団体職員/教員/60代/男性)

・経費請求の作業が煩雑で、少額でも何枚もの書類をつくらなくてはならず、面倒で請求しないことが多い(一般社員/デザイン/50代/女性)

・割り勘の食事会をドタキャンされた分の料理代およそ2万円(公務員・団体職員/研究機関/50代/女性)

AERA 2016年6月6日号