時間を惜しんで勉強に励む学生たち。休憩スペースのいつもの風景だ(撮影/写真部・堀内慶太郎)
時間を惜しんで勉強に励む学生たち。休憩スペースのいつもの風景だ(撮影/写真部・堀内慶太郎)
自習室には常に緊張感が漂っている(撮影/写真部・堀内慶太郎)
自習室には常に緊張感が漂っている(撮影/写真部・堀内慶太郎)
これが、炎の塔(撮影/写真部・堀内慶太郎)
これが、炎の塔(撮影/写真部・堀内慶太郎)

中央大学 法学部】「労惜しまず」の学風で復活

 夜11時になると、時計台のある建物から続々と学生たちが出てきて駅へと向かう。中央大学法学部ではおなじみの光景。「炎の塔」の一日が、こうして終わる。1年365日、朝8時から夜11時まで使える国家試験を目指す学生のための自習施設だ。

●予備校に匹敵する指導

 法曹界に多数の人材を送り出してきた中大の看板、法学部。1960年代から70年代前半までは司法試験合格者数3ケタを維持し、最高で172人を記録。これを支えたのは、卒業生と学生が自主的に組織する研究室だ。「玉成会」「真法会」など11の研究室があり、独自の運営方針に基づいて活動。「東大の赤門、中大の白門」と呼ばれ、一時代を築いた。

 しかし、東京都千代田区の駿河台から八王子市へとキャンパスを移転した78年前後から合格者が減り、2ケタに。81年には58人まで落ち込み、90年代を通じて早稲田の後塵を拝した。

「昔から先輩が後輩の勉強の面倒をみる文化がありました。法律事務所は都内。物理的に距離ができたことが大きかった」

 と中島康予法学部長は振り返る。だが、このままでは終わらないのが中大法学部だ。

 大学のカリキュラムとは別に課外講座として法職講座を設け、90年代には卒業生の弁護士らによる少人数制のゼミを開始。巻き返しのための仕組みを整えた。

「中大は人のために労を惜しまない学風。講師の確保では苦労していません」(中島学部長)

 巻き返しを加速させたのが、2002年に新設された冒頭の炎の塔。学部の少人数授業と卒業生による法職講座、新たな自習施設の「3本の矢」で、凋落に歯止めをかけた。4年に在籍中の15年に、司法試験に合格した安部雅俊さん(22)は言う。

「先輩たちから、予備校に匹敵するか、それ以上の指導が受けられる。ダブルスクールしなくて済みます」

 法職講座の受講料は多くが1講座2万円以下で予備校に比べれば格安。30分で1万円が相場の個別相談も無料だ。

●累積合格率8割が目標

 現在、司法試験を受験するルートは二つある。法科大学院を修了するルートと予備試験に合格するルートだ。中大に限らず最近は、時間もお金も節約できる予備試験ルートに挑戦する学生が増えているという。

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