美術学科の絵画コースでは、学生が作品作りに没頭していた(撮影/家老芳美)
美術学科の絵画コースでは、学生が作品作りに没頭していた(撮影/家老芳美)
同科彫刻コースには、静謐で独特の空気が流れる(撮影/家老芳美)
同科彫刻コースには、静謐で独特の空気が流れる(撮影/家老芳美)
250人収容の「中ホール」。演劇学科の舞台発表のほか、音響や照明の実習にも使われる(撮影/家老芳美)
250人収容の「中ホール」。演劇学科の舞台発表のほか、音響や照明の実習にも使われる(撮影/家老芳美)

【日本大学芸術学部】異なる才能が出会う場所

 テレビや映画などの世界に、著名な卒業生が輩出している日本大学芸術学部。2006年、在学生に夢を与えようと創設された「日藝賞」の歴代受賞者の顔ぶれは圧巻だ。

 歌舞伎役者の市川団十郎、脚本家の宮藤官九郎、写真家の坂田栄一郎、タレントの爆笑問題、作家の林真理子、脚本家の三谷幸喜──。

 これぞ看板学部。だが、在学中の学生たちからは、

「日大の中で僕たち、浮いてると思うけどなぁ」

 という、何とものんびりした答えが返ってきた。野田慶人(よしと)学部長(放送広告)でさえ本誌の取材依頼に、こうもらした。

「とても光栄ですが、取材と聞いて戸惑いました」

●センスは人で作られる

 確かに、学内では1889年に誕生した法学部の歴史が最も古く、学生数も芸術学部の2倍。理工学部も人気だ。しかし、途切れることなく、業界のトップランナーを送り出す芸術学部の存在感は他に類を見ない。なぜ、そんなことができるのか。

「違う才能同士が日芸で出会い、化学反応が起きる。隠れていたセンスが光り始めるのです」

 と野田学部長は言う。

 写真、映画、美術、音楽、文芸、演劇、放送、デザインの8学科が共通で受けることのできる公開科目があり、専門を超えた交流が盛んだ。美術学科が大道具を作り、出演は演劇学科が務め、映画学科がメガホンを握るような自主制作も日常的に行われている。

 さらに一歩外に出れば、文字通り「プロ」になった先輩たちに、いつでも会える。

 放送作家の小山薫堂さん(51)も、日芸放送学科の出身。

「センスは人で作られます。多くの人に出会えてチャンスをくれる場所でした」

 と日芸時代を振り返る。入学式を終えて初めて登校したその日に、校門で逆立ちしてスケボーに乗る先輩とすれ違った。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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